2-3 side:K ページ7
2-3 side:K
それにしてもこのまま家に行って大丈夫なのだろうか――よこーさんの言うところの“悪い人”と玉は一体どんな繋がりがあるのか。ただこうして隣いる以上は、どこにでもいる優しく綺麗な青年なのに。俺は横目でずっと玉の美しい横顔をジッと見つめてしまう。
「・・・っ！」
すると、突然藤ヶ谷が俺の掌を支えていた手をクルッと返し、俺の手の甲をそっと握る。そして、藤ヶ谷の人差し指が俺の手の甲に何かの文字を書き始める。
――そ・れ・で・い・い。
びっくりして俺は思わず目を丸くして見つめると、藤ヶ谷は反対側の手の人差し指を自分の唇にあてて、声を出さないように合図を送ってきているようだった。俺が唇を噤むように唇をキュッと引き締めると、そんな俺を見て藤ヶ谷は対照的に唇を緩ませている。玉も綺麗だが、藤ヶ谷もとても美しい顔立ちをしている。仕草も一つ一つセクシーだし、色香は女性よりも出ているし――さっきから俺の手と藤ヶ谷の唇に触れている人差し指に翻弄されっぱなしのような気がする。
「玉の家に行くの、初めてだな」
「あ、そうだっけ？ガヤとはいつも外で飲んだりばっかりだからか〜」
「玉の家のクローゼットとか興味ある」
藤ヶ谷の言葉に、さっき送られた合図の意味を理解した。藤ヶ谷も玉の家には行ったことがなかったということは、そこに何か玉の先にいる“悪い人”の手がかりがあるのかもしれない。どうやら上手くいっているみたい、と俺は玉と他愛もない話をする藤ヶ谷のおかげで少しだけ緊張が解けたような気がした。
「・・・えっ、何、玉！？」
すると突然玉が俺の首筋に顔を埋めてくるので俺はまた身体を強張らせてしまった。玉の吐息が耳を掠め、そのくすぐったさに肩を竦めてしまう。
「や・・・！」
思わず藤ヶ谷の方に仰け反りそうになるが、そのとき、また藤ヶ谷から人差し指の合図が送られ、俺は思わず息を呑んだ。
「嘘・・・！」
――が・ま・ん。
どちらにしても片手は玉に掴まれている。こんな運転中の狭い車内で逃げられようはずもない。クンクン、と明らかに匂いを嗅がれているような気がして、恥ずかしさに顔が真っ赤になってしまう。
「玉、お願い、いたずらならやめて・・・！」
「いい匂いするね・・・ねぇ、ミツ。香水、何つけてるの？」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
