5-18 side:K ページ47
5-18 side:K
昨日は藤ヶ谷と玉に挟まれて落ち着かなくて、さっきは無理矢理乗せられて、今回ばかりは平和に車に揺られているようだった。隣にいる宮田がチラチラこちらに視線を送ってきている。
「・・・どうかした、宮田?」
「えっ、あ、いや・・・玉と結局どうなったのかなって思って」
「・・・週末に会うことになってるよ」
「そっか!それは良かった!」
思ったより早く二人が出てきたから、と宮田はどうやら俺と玉があの部屋でそういうことをするのだと思っていたに違いない。キスは何度も交わしたけどきっとそういうことじゃないんだろうな、と俺は大きくため息を吐く。週末の玉との約束も、きっと今日みたいにただキスをするだけで済まされるなんて思わない。玉が俺と身体を繋げたと信じた以上は、当たり前のように触れてくるかもしれない。
――それが“結ばれた”実感ってことなのかな・・・。
結ばれるのが初めてなのか二回目なのかとか、次に抱かれた時にばれてしまうのだろうか。本当に知識も経験もなさすぎて、どうしたらいいのか分からない。横尾さんの事務所に戻って藤ヶ谷に相談すれば何か解決するのだろうか――俺は車の窓に自分の姿を映すと、そこには藤ヶ谷の残したキスマークが見える。これのおかげで確かに玉を騙すことができた。昨日は薬をつけておいてくれたおかげで逃れられた――まるで全て藤ヶ谷のシナリオに踊らされているような気がして少し怖くなる。俺に触れる手も唇も甘い声も全て、そのために与えられているのだとしたら絶対にこれ以上は流されたりなんかしない、と俺はグッと拳を握りしめた。
「キタミツ、そろそろ着くよ」
宮田の声にハッとして顔を上げると、車が減速して目的地にした公園の前で止まった。ちょっと待ってて、と宮田が先に降り、俺の座っている側の扉を開けてくれた。
「ありがとう、宮田」
「いえいえ・・・で、キタミツのお家はどこ?」
「えっ!?それは、その・・・」
「玉にちゃんと送るように言われているから」
俺は困惑して思わず俯いてしまった。どうしたの?と宮田が急に黙りこくった俺を心配しているようだった。すると――
「宮田様、玉森様よりすぐに戻るように連絡が入っております」
「えっ、玉から!?」
何だろう、と宮田は声をかけてきた運転手に何かを確認しているようだった。
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時