まえあし短編集(SS)～キスパ～(藤→北←玉) (ページ7)

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キスパ⑦(藤→北←玉) side:T＆F ページ7

⑦

「ミツ・・・！」
「北山・・・！」
　俺の買ってあげた帽子を目深にかぶり、ミツは窓の方を向いてそっぽを向くように眠り直してしまった。可愛い顔が見えなくなって、俺もガヤもガックリと肩を落としてしまう。こうなってしまって自分がお揃いの帽子をミツにかぶせてしまったことを酷く後悔した。ミツに現地に着くまでよく眠って機嫌を直してもらおうと、俺はガヤから離れ、宮田を伴って別の席に移動する。ガヤはちょっと嬉しそうな顔をして、また横尾さんに席を代わってもらうようにお願いしている。
「・・・チャンスはある、絶対に・・・！」
　ほんの少しでいい、ミツと二人きりになれるチャンスさえあれば、その時は――
「いいか、宮田。ちゃんと協力しろよ！」
「えっ、何！？ゲームの話！？玉の方が上手いからなぁ・・・」
　脈絡もなく話を振られて困惑する宮田に、俺は思わずクスッと微笑むと、先ほどのミツの寝顔を思い浮かべながら、自分も眠りについた――

***

side:F

「着いたー！！」
「すごいね、このテント・・・！これがグランピングかぁ！」
「あ、あれもうご飯用意されてる！嬉しい！」
「みっちゃんはご飯の方が気になるみたいだね」
　到着した本日の目的地は広いキャンプ場――テントが3つありその前にはウッドスペースがある。テーブルの上にはすでに豪華な食事が用意されているようだった。
バスから降りた北山はよく眠れたのか機嫌を取り戻していたようだった。その笑顔に俺の口角も自然に引きあがっていく。ふと少しだけ視線を逸らすと、玉も俺と同じように北山に熱視線を送っているのがよく分かった。玉も北山に好意を寄せているのは薄々勘づいてはいたが・・・今回の俺の北山とのラブラブ計画を邪魔させるわけにはいかない。とにかく北山の傍を離れないようにしないと、と思った瞬間――
「えっ、座席自由！？」
　じゃあ好きな席に座ろう！と座席に駆け寄るメンバーたち。俺も目を輝かせた。
「早速チャンスが・・・北山！」
「ミツ、一緒に座ろう！」
　先を越された！と俺は慌てて二人に駆け寄る。
「うん、いいよ、玉ちゃん」
「今度こそ膝の上に乗っていいよ！」
「・・・いや、それは遠慮したい・・・えっ、藤ヶ谷！？」
　玉の提案を聞いている北山の手首を掴み、俺はイスに半ば強引に北山を連れて行く。
「ちょっとガヤ！邪魔しないでよ！！」
「俺と隣同士に座ろう、北山」
「藤ヶ谷・・・ダメだよ・・・」

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