まえあし短編集(SS)～キスパ～(藤→北←玉) (ページ6)

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キスパ⑥(藤→北←玉) side:T ページ6

⑥

「はぁ！？俺の可愛いミツに何をしようとしてんだよ！」
「お前だってさっきまで俺の愛する北山で邪な妄想してただろうが！」
「人の妄想覗くのやめてよ！それに、妄想じゃありません、シュミレーションですー！」
　だってもうすぐ現実になるんだから、と俺は唇を尖らせて見せる。そう、ミツだって俺にそんな悪い感情は持っていないはず――俺は本気だから。
「ちょっと、二人とも静かに！！みっちゃんが起きちゃうでしょ！！」
　横尾さんの大声に俺達はピタッと揉めるのをやめてそちらに視線を送る。叫んだ横尾さんもハッとしたように恐る恐るミツを見つめた。もぞもぞと身を動かすミツの姿――可愛い寝顔が見られなくなってしまう、と俺の背中を冷や汗が伝う。
「んーうるさ・・・むにゃ・・・」
「「「・・・しー・・・！！！」」」
　三人で唇の前に指を立てて、お互いに静かにするように牽制しあう。しばらく沈黙を守ったままミツのまるで赤ちゃんのように無垢な顔を見つめていると、むにゃむにゃ口を動かしていたミツがまた安らかな寝息をたてる。ホッ・・・と三人で安堵のため息を吐き、俺はガヤに半分身を乗りかかったような状態でミツに視線を送っていた。
「可愛いなぁ、本当に・・・」
　小さくて女の子みたいに可愛くて、いつまでも俺を甘やかしてくれて、気建がよくて優しいミツ――本当に愛おしく思う気持ちが抑えきれくなる。ぷっくりとしているその唇に、今すぐ――
「おい玉・・・いい加減俺から降りろ・・・！」
「いいだろ、このくらい！」
　重いんだよ、とガヤが俺を何とか引き離そうとしてくるので、俺は逆にガヤにしがみつく。そんな様子を見て、横尾さんがまた困り顔をしている。
「二人ともまた・・・静かに・・・！？」
「「「おっはよーございまーす！！！」」」
「げっ！」
「これでメンバー揃ったね！ニカ、どこ座る！？」
「そうだなー、あっ、北山さん、玉と同じキャップかぶってるじゃん！」
「玉ぁ！昨日の話の続きなんだけど！！」
　賑やかな健永・ニカ・トシくんがバスに乗り込んできた瞬間、静けさは一気に打ち破られ、ワイワイと盛り上がりを見せてしまう。ミツの顔が一気にクシャッと歪む。
「んぁーうるさぁいっ！」

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