キスパ29(藤→北←玉) side:F ページ29
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北山とMCを交代した俺は、渉に被っていたハットを預け、対戦相手の千ちゃんに向かい合う。とにかく負け進めなければ、と俺は北山にチラッと視線を送る。北山と対戦して同じように森の中に連れて行けば、玉と何があったのか聞き出すことができるかもしれない。
「よーい、スタート!」
北山の声で合図がかかり俺はバットに額をつけてクルクルと回り始める。
「速いと、やばいね」
すでに自分が目を回しているアピールを交えていれば、あっさり負けてしまっても誰も何とも思わないだろう。明らかにわざと負けに走る様子を見せれば玉も警戒するかもしれないし。実際、目は回り始めている――
「「「「「なーな!」」」」」
よし終わった、と顔を上げた瞬間に、目の前に映ったのは、漫画のワンシーンのように綺麗にクルッと身を翻し、吹っ飛ぶようにして地面に倒れこむ千ちゃんの姿だった。
「やったー!!」
反射的に思わず両手でガッツポーズをしてしまうけれども、そうじゃない、と俺は呆然としてしまう。千ちゃんの三半規管が弱いのは分かっていたけれど、ぐるぐる回っただけでこんな感じにになられてしまっては、さすがにどうしようもない。
「あっはっはっはっ・・・藤ヶ谷さんの勝利〜!」
「よっしゃー!」
もうせっかくなのでひたすら勝って嬉しいことだけはアピールして、北山の仕切るゲームを楽しんでいることは全面的に出しておこうと俺はもう一度ガッツポーズをした。未だに体育座りをしている千ちゃんは本当に目が回っているようで、息荒く項垂れている。
「もう、千ちゃん〜〜〜!」
これで北山と対戦することもできなくなってしまった。さらに、玉の言葉が追い打ちをかけてくる。
「いや、ちゃんと相撲取ったわ」
それは、二回戦の北山とニカが対戦することになったとき――始まる前に虫が嫌いなニカの足に蝉がくっつくというアクシデントがありながらも、回転が終わった際にニカと男らしく(元々、男です!by北山)向かい合いがっつり相撲を取りニカの上に倒れこむ北山。そんなニカが羨ましく思いながらも、玉が告げたその一言に気を引き締める。玉は北山とは相撲を取ってなんかいないという意味だろう。北山を森に連れ込むことを目の前で許してしまったことが本当に悔やまれる。
「玉、本当に北山に一体何をしたんだ・・・!」
その後も三半規管の弱さに苦しんだ千ちゃんが渉、ニカ、トシくんに敗北し、最弱王になった――
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作者名:ほわわ | 作成日時:2018年12月3日 0時