まえあし短編集(SS)～キスパ～(藤→北←玉) (ページ14)

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キスパ⑭(藤→北←玉) side:F ページ14

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　残された席の配置から、玉の隣に座るのは癪だったので、俺は避けるように玉の正面に座った。最後に座る北山の位置の正面を陣取って、北山が思い通り自分の目の前に来た時に小躍りでもしそうなくらい嬉しかったのに、玉にまんまとはめられてしまった。流行語大賞企画が始まり、北山をまるでアシスタントのようにこき使う玉にイライラしながらも、ボードにペンを書き進めていく。
「玉も言ってるワタワタって・・・ワタワタ、ワタワタ」
　何度も“ワタワタ”と発している北山が可愛くて、俺はずっと見つめてしまう。
「だいたい渉のことを話しかけるときみんな言ってるよね！ねぇ、ワタワタって」
　うんうんナイスな意見だ、と俺は納得するように大きく頷いた。
「だから一回につき2ワタ使ってるから」
　答えはワタ、と渉に向かって説明をする北山に、渉は笑顔で答えているようだった。渉が羨ましい、とじーっと見つめていると、渉がちょっとびっくりした顔を俺に向けた。すると、その回答に疑問を覚えたのか、ニカが不満そうな顔をする。
「いや、“りょうかい”には匹敵しないべ」
「これはメールで文字で残ってるから・・・でも耳に残ってるのはこっちじゃない？」
　というより答えの内容は何でも構わない。北山の意見に賛同していいところを見せなければ。北山をチラッと見つめるとボードの上からひょこっと顔を出しているようなスタイルで俺に可愛い笑顔で熱視線を送ってくれている。よしよし、北山の中で俺の株が急上昇しているに違いない。
　そのあと渉や宮田の回答が続き、次第にテントの中も盛り上がりを見せる。
「じゃあ俺行くわ」
　玉の言葉に、北山もまるで期待を寄せるかのようにキラキラとした瞳を向ける――それを見て俺は言いようもない焦がれる想いを抱いてしまう。
「“はい”」
「それ、“りょうかい”に匹敵するわ」
「“りょうかい”より酷いわ」
　玉の答えにツッコミを入れる北山にさらに乗っかっていく。どんどん上がれ俺の株！と思っていたらさらにみんなまで乗っかかってきてしまって結局俺は多分薄れていってしまった――ここで巻き返さないと、と俺の回答順番になり、フリップを勢いよく出した。
「みんなの体はオレらのモノだから！！byわた」
　そして北山の身体は俺のモノだから！と俺は理由を説明しながら、時折足を大きく開いているまるで俺を誘っているかのような北山に視線を送りニヤニヤしてしまう(誘ってません！by北山)。

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