12時に解ける魔法（玉北） (ページ6)

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後日談②そして玉森さんは　side:T ページ6

後日談② Side:T

「すみません、遅くなりました。間に合いそうですか？」
「間に合わせます～ただ到着したらすぐに撮影になりそうなので、準備だけお願いします」
分かりました、と俺は白いバンに乗り込んだ。忘れ物を取りに行きたい、という名目で、撮影の空き時間にかなり無理矢理車をまわしてもらった。
ミツがバースデー当日一人で過ごしていることを知ったのは、メンバーの混乱LINEを見てから。そういえば朝送ったバースデーLINEにも返事がなかった。
長すぎるLINEを発端から読み直すと、特にニカ千のパニック具合が酷く、つられる宮田と、空気読めてない感じのガヤと、とにかく場を落ち着かせようとする横尾さんの構図が分かりやすいほど入ってきた。
でも、メンバーがこんな状態になっているのに、ミツが沈黙を守っているはずがない。本当に何かあったんじゃ――そう思った瞬間に、俺は弾かれたように外に駆け出していた。スタッフさんに無理を言って車を出してもらう。

・・・まさか寝ていたなんて思わなかったけどね。ミツらしいけれども。

本当は、一緒に過ごせないって伝えたときに、ミツは気づいていなかったと思うけど、凄く寂しい瞳をしていたんだよ。でも一生懸命俺のために我慢してるって分かったから何も言えなかった。気分屋でマイペースな俺をこんなに困らせるのは多分ミツだけ。本当に意地っ張りで、年上だけど寂しがり屋で、笑顔が可愛い最高の恋人――

『ミツと連絡がとれたよ』
ミツと電話がつながったみたいで(つながらなかった原因の一部は俺だけど)、横尾さんから書き込みが入る。
『なんか最高のバースデーだったみたい』
その書き込みに思わず顔が赤くなる。
ほら、ミツのことを考えているだけでこんなに幸せな気持ちになれる。
「ミツ・・・俺も」
撮影が終わったらすぐに会いに行こう。
左手のリングに唇を寄せ、俺は満面の笑みを浮かべた――

Fin.