12時に解ける魔法（玉北） (ページ43)

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Voice of a Miracle⑳ ページ43

⑳

「ミツ・・・これからも俺は役に入り込んでなかなか戻ってこられないときがあるかもしれない」
　そのくらいじゃなきゃ映画でもドラマでも画面の向こう側にいる人たちに届くかどうかなんて分からない。グループの名前を背負っていくのだから俺はいつでも本気で挑まないと――ミツがこの間ラジオで言ってくれたみたいに、“玉森裕太”という存在をもっとたくさんの人に気がついてもらいたい。だから、役に入り込み過ぎて、他の仕事のときにもしかしたら迷惑がかかってしまうかもしれない。
「ミツが・・・そんなときいつもさりげなく俺のことカバーしてくれてることにずっと感謝しているんだ」
「玉ちゃん・・・」
　俺はそんな、と顔を赤らめて少しだけ困ったように微笑むミツ――謙遜しているその姿が可憐で、それでいてきっとそんな行動も無意識なのではないだろうか。反対に俺はミツが意識もしていないのに俺のことをいつも守ってくれているのでは、と自惚れてしまう。愛している人に本当に愛されているのだと、これ以上ないほどの幸せを感じてしまう。
「でも、その度に俺にとってグループのみんなと一緒にいられるときは、俺が俺でいられるんだっていつも実感している」
　役によっては厳しい顔をずっとしているときもあれば、精神的に追いつめられていく役もあるだろう。明確なコメントが言えなかったり、疲れを表に出せずに抱え込んでしまっているときがあるのかもしれない。でもその輪の中に入った瞬間に、ゆるかったりちょっとふざけあったりしたときに、いつもの俺であることに気がつく。長年一緒にいるメンバー、そしてもちろんミツと一緒にいられる場所は、本当にかけがえのない、普段の俺の居場所なのだと思う。
「いつでも俺の帰る場所でいて・・・ミツ」
「うん・・・もちろん、玉ちゃん」
　いつでも俺は傍にいるよ、とミツが包み込むように俺を抱きしめてくれる。
「・・・本当にミツの声・・・心地いい。ラジオ聴いたときもそう思ったんだけど」
「玉ちゃん、もしかしてこの間の俺のソロラジオ聴いてたの！？」
　恥ずかしい、とミツは俺から手を離し、今度はミツが俺の胸板に顔を寄せる形になる。
「あー、もう、本当に可愛いなぁ・・・俺のことについて話してくれて嬉しかったよ」
「・・・うん・・・」
　ミツの腕が俺にゆっくりと回され、ギュッと力が込められたのが分かった。

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