12時に解ける魔法（玉北） (ページ27)

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Voice of a Miracle④ ページ27

④

「大丈夫だよ、ミツ。それにおまじないがあるから」
『・・・えへへ・・・照れるなぁ』
「ミツ、俺、今、赤い衣装着てるんだけど」
『今回そうなんだ！珍しいね』
「・・・うん、何か、最後のフライングとかはミツに抱き締められているような気持ちになっちゃう」
『ほえっ！？・・・あの、その、うん・・・良かった・・・』
　ミツが電話の向こう側で困って顔を赤らめている様子が浮かび、自然と笑顔になってしまう。
「・・・おまじないのおかわりが欲しいなぁ、ミツ」
『玉ちゃん・・・俺だって会いたい・・・でも』
「舞台に集中して、だよね」
『今回、一緒に入っているジュニアの子たちも結構若いから・・・三人が引っ張っていかないとより良い舞台を作れないと思うし』
「じゃあ受話器越しで・・・ミツ」
『え、えっ！本当に・・・？・・・うん・・・』
　チュッ、とお互いに唇を尖らせて、音を立ててみる。恥ずかしい！とミツが顔を伏せてしゃがみ込んでそうな気がする。
「しまった、テレビ電話にすればよかった」
　今から切り替えてもいい？と俺が問いかけると、ミツが焦ったような声を上げる。
『も、もう、これ以上は無理・・・！』
「・・・どうして？」
『だって、本当に会いたくなっちゃう・・・玉ちゃんの顔を見たら』
「同じ気持ちでいてくれて嬉しい・・・ミツ・・・」
『玉ちゃん・・・大好き・・・』
「それも同じ・・・大好きだよ、ミツ」
　さすがにくすぐったいくらい俺の中にも恥ずかしい気持ちが芽生えてきて、フフッと吐息を漏らしてしまうと、クスクス、とミツも小さく笑っているようだった。
「おーい、玉！追加で取材みたい・・・って、ごめん、電話中か！」
　突然ドアが開き宮田が入ってくるも、俺が電話をかけている様子に驚き、また廊下へ戻っていった。
『宮田の声がした・・・玉ちゃん、そろそろ切らないと』
「んー・・・」
　それでも何となく自分からは切りたくなくて、ミツに頼んでしまう。
『じゃあ、また明日、玉ちゃん・・・ゆっくり休んでね』
　はーい、と気の抜けたような返事をするとミツが最後に小さく微笑んだ声がした。俺はミツの声の余韻を感じるかのように、携帯電話を胸にあてた。
「・・・また明日も・・・電話くれるんだね、ミツ」
　明日こそテレビ電話にしちゃおうかな、と俺は思わずニヤついてしまう。その俺の望みを叶えてくれる優しい声に、舞台を終えた疲れがいつの間にか癒されていた。

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