「一人は嫌いでしょ?」 ページ2
「ちょ、ちょっと玉!」
「さすが、ミツ!一通りそろってるじゃん!」
家の主を差し置いて、ズカズカと人の家に上がりこむと、テーブルの上に置きっぱなしになっていた買い出し袋を見て、玉はガサガサと何かを探し始めた。
「よし、まずはお祝いといえばシャンパンね」
「た、玉、人の話聞いて・・・撮影は・・・」
「時間ないので無理です、開けます!」
ポン、と栓の開く音がして、コルクがどこかへ飛んでいく。直前に振ってしまったのか、中身が勢いよく溢れ、ボトルを持つ玉の手がびしゃびしゃになっていく。溢れたシャンパンが小さな水たまりを床に作り始めていく。
「グラス!あと、ふきん、あと、床・・・!」
「ミツ、早く早く!」
「ちょっと玉、勝手におっぱじめて一体何なの!!」
あと、撮影は!?とようやく思考が追いつき始めると、イライラしたような口調になってしまっていた。
「・・・ごめん、ちょっと焦りすぎたかも」
「・・・っ、もうっ!」
玉に謝られると絶対に怒れない。玉も多分、分かっているから言ってる。バースデー一緒にいられなくてごめん、と言った時と同じ、申し訳そうにでも甘える声――弟のように可愛がっていたころからの彼に対する一番の弱点。
慌てて台所に駆け込み、グラスとふきん、そしてタオルをもって元の場所に戻る。テーブルの上にグラスを置くと、玉は何事もなかったかのようにそれにボトルの中に残ったシャンパンを注ぎ始める。べたべたになってしまうとその間俺は大慌てで床を拭く。そして、タオルを手に玉に向かい合った。
「・・・拭いて、ミツ」
「んーもう、本当にしょうがないな〜」
新品のタオルで差し出されていた玉の大きな手を拭い始める。真新しく新品そうな指輪もベタベタで跡が残ってしまうのではないかと心配になった。
「玉、本当に撮影どうしたの?」
「一人は嫌いでしょ?」
ミツは、と玉はタオルごと俺の手を包み込むように握りこむ。ギュッと力を込められて、俺は自分よりも背の高い玉を見上げた。自分に向けられる真剣だけど優しい眼差しに、弟のように可愛がっていた彼が自分の恋人になった瞬間をふと思い出してしまう。
『ミツは一人は嫌いでしょ?』
『あーまぁそうかも。ご飯とか特に・・・』
『じゃあ、俺の恋人になって』
寂しい想いはさせないから、と甘える声が甘い声になって耳元に囁かれた瞬間――うん、と顔を赤らめながら頷いた自分がいた。
――現在の時刻、23時57分、そろそろ魔法が解けてしまう。
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作者名:ほわわ | 作成日時:2018年3月18日 0時