青春ドンスト！(藤北←玉) (ページ9)

今日:2 hit、昨日:24 hit、合計:22,729 hit

アイドル部にて④　side:T ページ9

アイドル部にて④ side:T

　アイドル部に入部したときに、小さくて可愛い女の子みたいなミツに興味を惹かれた。でもよくよく話していると、見た目とは裏腹にすごく男らしくて熱くて――ミツは俺を弟のように可愛がってくれたけど、その熱量にどう応えたらいいのか分からなくて少し距離をおいていた時期もあった。時折淋しそうなのか慈しみなのか分からないほど優しい瞳で俺を見つめられて――余計に切なさが増してしまう。その視線に応えようとしたときにはいつもその隣に――
「それに、宮田たちも」
　困っているみたいだぞ、とガヤは冷静に俺に告げてくる。
「玉ぁ、何してるの？俺達、入れないんだけど！」
　早く部屋の中に入ってくれ、とガヤの言葉の通りに宮田に煽られる。俺は大きくため息を吐き、ミツからそっと手を離した。扉からも離れるようにして足を踏み入れると、宮田たちがバタバタと中に入ってきた。
「やべー、結構遅刻じゃない！？」
「大丈夫、横尾さんがまだじゃない！？」
　俺ならすでに中にいるけど、と部室の倉庫から横尾さんが今日の練習に必要な道具を持ってきたようだった。
「ちょっと全員説教しないとダメかなぁ」
「いや！本当に申し訳ない！」
　横尾さんに怒られると長い――手伝います、と宮田たちは慌てて横尾さんの手伝いを始めたようだった。俺も手伝いをするか、と重い足を動かすと、申し訳ない、とでも言わんばかりのミツが俺の服の裾を掴み見上げてくる。
「玉ちゃん・・・ごめんね、俺が変なことしたから・・・」
「・・・っ、ミツが謝ることじゃない・・・」
　謝らないで欲しい――告白してもいないのにその前に断られてしまっているようで胸が痛くなる。どうして一番気がついて欲しい人はこんなにも鈍いのか、と俺はどこに自分の気持ちを向けていいのか分からなくなってしまう。俺は曖昧な笑顔をミツに向ける。
「・・・ミツは小さくてぬいぐるみみたいなんだよなぁ」
「えっ！？」
「だからムギューってしたくなっちゃったの」
「・・・小さいは余計だ！俺はちゃんと180cmあるの！」
「起きたときは、でしょ。はいはい」
　何だよその投げやりな感じ！とミツは頬をリスみたいに膨らませて、横尾さんの手伝いに行ってしまった。その可愛らしさに思わず頬が緩む。
「・・・だったら俺に見せてよ・・・寝起きのミツを」
　すると、ゆったりと俺の背後に立つ影――俺は笑みを浮かべて振り向く。
「ガヤ、何か用？」

next→アイドル部にて⑤