カップル玉北編 26 side:T ページ26
26 side:T
二人でタクシーに乗って、俺の部屋まで戻ってきた。車内ではお互いに言葉を話すこともなくお互いに疲弊しきった身体をただ車に揺られるままにしていたと思う。乱雑に二人の間に置いたジャケットの下で強く手を握りしめあいながら――
「・・・ミツ、ベッドにおいで」
「うん、玉ちゃん」
お互いに正直裸は見慣れているので特に抵抗感はなく(ミツはちょっと恥ずかしがっていたけれど)それぞれシャワーを浴びてパジャマに着替える。俺は先にベッドサイドに腰をかけ、自分の姿に向かって手招きをする。トコトコと足早に駆け寄ってくるミツは、俺の姿のはずなのにやっぱりミツで、横に座って寄りかかってくるミツの肩に腕を回して目を閉じれば、いつもと何一つ変わらない幸せがある。
「・・・じゃあ、俺から話すね」
ゆっくりと目を開き、ギュッとミツを抱き寄せる手に力を込める。コクッと頷くとミツは俺の胸にそっと手をあててくる。
「・・・この間、二階堂と・・・ホテルに行った」
「・・・っ!!」
一瞬で悲しみと戸惑いに歪むミツの表情を見て、最後まで聞いて欲しい、と自分の胸に触れる手をそっと握る。
「黙っていたのは・・・二階堂に口止めされてたんだ・・・千賀のバースデーサプライズで下見に行ったから・・・!!」
「・・・えっ!?」
「二階堂が結構綿密にサプライズしようとしてたみたいで真剣に頼まれたから・・・でもこんなにミツを不安にさせるくらいなら、ミツには・・・大切な人にはちゃんと説明しておくべきだった」
「よこーさんはじゃあそのときに・・・」
サプライズ以外のところはちゃんと説明したんだけどね、と俺は苦笑いを浮かべた。言い訳を連ねた姿は俺にやましいことがあるからだろうと判断されたのかもしれない。横尾さんにとっては俺とミツを別れさせる絶好の機会だと思ったのだろう。結局、中途半端に隠そうとすると綻びから余計にこんがらがってしまうものなのだということは今回本当に思い知らされた。
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作者名:ほわわ | 作成日時:2018年1月15日 0時