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一足先にアジトについた俺たちは、器具で何とか手錠と鎖を外し、先に玉を助けるための作戦会議を始めていた。
「こんなことがあったんだ、奴らもすぐに行動を起こすだろう」
人質になっている玉は歌うたいのリーダーだ。玉を捕らえたことをアピールするだけでも街の人を押さえつけるには十分だろう。
「・・・玉は市内を見せしめのために連れまわされた後、奴らのアジトで儀式にかけられる」
「戻ってきた人の話じゃ、その後、声が出なくなる薬を飲まされるらしい・・・」
歌うたいが声を奪われるなんて考えただけでもぞっとしてしまう。玉も今どんな目にあわされているか分からない。
「逆に狙い目だ、奴らと同じ格好をして内部から撹乱させる」
幸いなことに敵が全員マント姿なので紛れ込むことは容易だろう。儀式で浮足立つ組織の人間と一人ずつ入れ替われば玉を救うことも難しいことではないかもしれない。北山たち三人が戻ってきたら、早速儀式の日について探りをいれよう、と二人に声をかける。
「さすがだね、ガヤさん。こんなあっという間に作戦を・・・」
「ガヤさん・・・なんか無理してない？」
何のことだ？と俺は宮田を見据える。キタミツのこと、と付け加えられて、俺は苦笑いを零した。
「・・・今は玉を助けることに集中しよう」
玉を助けることが何よりも北山の笑顔に繋がるはずだ――
本当は誰よりも仲間想いで優しい北山があんなに玉のことしか考えていないような取り乱した様を見れば、本人も気が付いていなかったであろう気持ちが痛いほどよく分かった。そして、そんな北山に逃げるように促し俺に北山を託した玉の心も。格子を挟んで触れられないことは分かっているのに、強すぎる眼で見つめあっていた二人の姿が焼き付いて――そこには嫉妬の隙すら与えさせない。
「みんな無事か！」
良かった、とお互いに駆け寄って無事を喜びあう。北山がトコトコと俺に駆け寄ってきた。
「藤ヶ谷、ありがとう・・・絶対に玉ちゃんを助けような！」
北山のはにかむ顔に俺もつられたように口元を緩ませた。走ってきたからか、赤く染まっている北山の頬にそっと触れてみる。
「・・・あー、頼むね、最年長」
一番好きなのは玉のことを思っているときのキラキラした北山なのかもしれない――俺は自分の気持ちを誤魔化すように、そのままムニッと柔らかい頬を伸ばしてみると、北山がほえっ？とキョトンとした瞳で俺を見つめていた。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
