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6 side:K
先に出発する藤ヶ谷達を見送って、俺と横尾さんとニカもまた走り始めた。俺が先導する、とニカが先陣を切る後についていく。その二人の背中に、俺は走りながら声をかけた。
「よこーさん、ニカ、ごめん・・・」
えっ、と二人は振り向き、いったん民家の陰に隠れる。
「・・・今回俺たちが捕まったの・・・俺のせいかもしれない」
よく考えれば、なんでリンゴをくれた人は俺たちの居場所が分かったのか――リンゴを受け取った時に姿を確認されたか、もしかしたらその赤い果実こそ罠だったのかもしれない。そうでなければあんな的確な襲撃なんてできないだろう。迂闊な俺の行動が結局は大切な人たちを危機に陥らせてしまった。
もう一度、ごめん、と頭を下げると、二人は口元に笑みを浮かべていた。
「俺たちは気にしてないし、裕太もきっとそういうと思う」
「玉を捕まえて油断しているかもしれないから、逆にチャンスかも」
玉を助けてあいつらをぶっ潰そうぜ!とニカは拳を握って腕を上げてみせた。
大丈夫だよ、と横尾さんが俺の背中をポンっと叩く。俺は二人の優しさに浮かんでくる涙を止めることができなかった。藤ヶ谷にも、千賀にも、宮田にも後で謝らなければ。そして誰よりも――
「みっちゃん、裕太だってそんなやわじゃない・・・きっと大丈夫」
「うっ・・・玉ちゃん・・・!!」
俺は優しい玉の歌声を思い出していた。どうしてあの日、玉を受け入れられなかったのだろう。こうして本当に会えなくなってしまう日が来るなんて思ってもみなかった。今も格子を隔てたその向こう側から逃げるように強く訴える瞳が忘れられない。こんなにも傍にいるのに触れられないもどかしさや引き離される瞬間の悲しみは二度と繰り返したくない。
「玉ちゃん、必ず助け出すから・・・!!」
もう一度巡り逢えたら、そのときはリンゴでその唇を塞いだりなんかしない。もしまだ玉が伝えてくれるなら、気持ちを全部受け止めさせて欲しい。俺も全てを伝えるから――
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作者名:ほわわ | 作成日時:2017年12月6日 0時