2-another-26 side:F ページ37
2-another-26 side:F
魘されるように首を振り、シャツを掴む俺の手を引き離そうとする北山を無理矢理抑えつけるように、俺は北山の両頬を自分の両手で挟み込む。
「・・・北山・・・拒絶するな俺を・・・俺はずっとお前を守ってきただろう?」
「それは・・・でも、こんなこと、なんで!?玉ちゃんが頑張ってくれて・・・やっと俺達自由になれるのに!」
「・・・やっぱり、玉、なのか・・・」
「俺は、藤ヶ谷に俺を背負って欲しくない・・・藤ヶ谷にも自由になって欲しいんだ!」
「俺は・・・そんな自由なんかいらない!ずっとこんなに近くにいたのに、どうしてお前は俺の気持ちに気がつかないんだ!!」
今まで北山にこんな余裕のない素振りをみせたことがあっただろうか。こんなにも声を荒げてみて初めて気がついたのかもしれない。北山を失うということにどれだけ自分が怯えていたのかを――
「・・・藤ヶ谷・・・!?」
「・・・出会った時からずっと・・・お前と運命の鎖で繋がれていることだけが俺の心の支えだった」
愛してる、と俺は北山の頬にそっと口づける。そして、今度はその唇へ、と顔を上げたそのとき――
「やだ・・・やだよ、藤ヶ谷ぁ・・・!!」
可愛らしい表情が見る見るうちに涙に咽び、くしゃくしゃと歪んでいく。その瞬間に、胸に鋭利な何かを突き立てられたかのようにズキッとした痛みが走り――俺も思わず顔を顰めた。
「・・・楽しみは後に取っておくか」
俺は北山の柔らかい頬をムニッと横に引っ張った。ひっくひっくとしゃくりあげながら、北山は瞳を丸くして俺を言葉なく凝視している。俺はこれ以上は何もしないという意思表示のように両手を北山の目の前で小さく挙げて見せる。
「・・・とにかく明日からは俺の婚約者としてきちんと振る舞ってくれ」
「・・・藤ヶ谷っ・・・」
「俺のいないところで他の男と二人きりになることは許さない・・・もちろんメンバーも・・・玉も含めてだ」
「・・・そんな・・・」
両手で顔を覆い、俺のベッドに伏せ泣き崩れる北山にそっと毛布を頭まですっぽり覆うようにしてかける。今日は他の部屋で寝るから、と言い残し、俺は自分の部屋を後にした。先ほどまで北山の柔らかい肌に触れていた手をギュッと握りしめる。北山を傷つけてしまったのに、感情に昂ったこの手はとても熱い。だが、北山を守るために、これ以外の選択肢を選ぶ余裕はない。
――お前は必ず俺が守る、北山・・・!
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作者名:ほわわ | 作成日時:2017年12月6日 0時