2-another-�� side:K ページ31
2-another-�� side:K
少しの間、全員の時が止まったかのように、教室は静まり返る。俺も例外ではなかった。手にした茶色の封筒の中身と、玉が赤い制服を手に入れたことと、校長の言葉と――何から驚いて何から受け止めていいか分からなかったのかもしれない。その中で、沈黙を打ち消すかのように、二階堂が小さな声で、やった・・・と呟いた。次の瞬間、凍っていた時を解き放つかのように、四人が一斉に沸き立つ。
「玉！やった！！」
「すごいじゃん、玉！！しかもリーダーだって！！」
「よかったよ〜玉ぁ〜！！」
「宮田、泣きすぎ」
受け取った玉森本人は少し呆気に取られているかのように表情を変えず手にした制服を見つめていたが、次第に込み上がる喜びに口元を綻ばせた。
「玉、おめでとう」
「玉ちゃん・・・！」
藤ヶ谷が玉の肩をポンと叩き、俺は玉の服の裾をギュッと握った。ありがとう、と藤ヶ谷に呟くと、玉が穏やかな表情で俺を見つめる。
「ミツ・・・これで俺はミツに近づけたかな。ミツの運命を変えてあげることが・・・！」
「・・・玉ちゃん・・・」
もっと自分のことを喜んで、と俺は玉から赤い制服をそっと預かった。察したのか玉は手早く身に着けていた青のブレザーを脱いだ。そして俺は制服を広げ、後ろに手を伸ばしている玉の腕を通す。初めて見る姿なのに不思議と着慣れているその姿――心なしか表情も凛々しく見える。俺は無意識にその背中にそっと歩み寄り頬をつけた。服を羽織った時のように伸ばされた玉の腕が、まるで俺をおんぶでもするかのようにまわされる。玉の背中の羽根に包まれているような錯覚を覚えるほど温かさが身体と心に滲む。
「それでは引き続き練習に励んでくれたまえ」
校長は踵を返し、教室を出ていく。
「あ、でもリーダーになったってことは、この街の長になる資格が玉にもあるってこと！？」
「おいニカ！いくらなんでもガヤさんの前で・・・！」
「いや、気にしなくていいよ。事実だし・・・」
玉にもその資格がある、という藤ヶ谷の言葉に、玉は一瞬驚いた面持ちを見せる。
「俺が長になれば・・・ミツを運命の鎖から助けてあげられる・・・！よし！！」
河原でみんなで練習しよう！とほどいた手で俺の手首を掴むと、カモンカモンと玉は全員に手で合図を送り、俺を伴って走り出す。そんな突拍子もない玉の行動に驚きながらも、俺は口元のにやけを抑えきれずにいた。玉の手から伝わってくる温もりが心地よい――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
