2-another-�� side:K ページ30
2-another-�� side:K
俺はあの日、結局自分の家には戻らず、玉の家に泊めてもらった。いつの間にか泣き疲れて眠っていたらしい。ゆっくりと目を覚ますと、ベッド脇の床に胡坐をかくようにして眠る玉の姿を確認して、俺は目を細めた。まるで、自分を守ってくれているかのようなその姿―—俺が起きたことに気がついたのか、同時に目を覚ました玉がにっこりと微笑み、そっと俺の頬を撫で、髪の毛を梳いてくれる。優しさに満ちたその仕草に、心の高鳴りは抑えられそうになかった。
朝方、玉に送ってもらって家へ戻ってから、俺は家の人間に二度とこんなことをしないように頼んだ。決して家の者は今回の件を認めようとはしなかったけれど、効果があればいいと思う。藤ヶ谷に手出しなんかさせない。危険な目になんか遭わせない――
――玉を信じていれば、きっと俺達の運命は変わる。
「ミツ、ここの歌詞なんだけど・・・」
「うん、俺ならこう解釈するかな・・・で、こういう歌い方とか・・・」
俺が襲われたあの日から、玉の瞳の色が変わったような気がする。その真摯さに心を打たれていくかのように、俺も周りのみんなも玉に信頼を寄せていく。いつの間にか玉を中心にして大きな輪が作られていくように感じて、俺はその度になぜか誇らしくて嬉しくてしょうがなかった。七人で居残り練習をして、奏でるハーモニーの精度をどんどん高めていく。最近周りから今までとは違う目で認められているように思えているのは、このためなのかもしれない――
「・・・ほんと、俺には玉ちゃんが天使に見える・・・」
今までに出会ったことがない自由さと包み込んでくれる優しさが本当に眩しい。俺は歌を歌いながらも、眩しさに引き寄せられるかのように玉に時々視線を送ってしまう――
「まだ残っていましたか」
「・・・こ、校長先生！？」
ちょうどよかった、と音楽室に突然入っていたアカデミーの校長の姿に、全員が帽子を脱いで挨拶をする。聞いてもらっていいかね、と校長はなぜか俺達の姿を一人一人確認し、俺に茶色の封筒を手渡した。開封を促され、俺は慌ててその封筒から書類を取り出す。メンバー全員が身体の乗り出すように俺の手の書類を確認しようとする。
「君たち七人を我が町代表の歌うたいとすることになった。そして・・・」
書類にはお披露目会についての詳細が書かれている。
「リーダーは君が務めなさい、玉森くん」
これを、と校長から玉に赤い制服が手渡された――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
