2-another-�� side:F ページ29
2-another-�� side:F
「ガヤ！ちょっと教えて！ガヤならここのパートどう歌う？」
「あ、ああ・・・俺だったら・・・」
北山が襲われた日から、玉が変わったように思う。もともと不真面目であったとかそういうわけではないが、より一層熱心に練習に取り組むようになっていった。
「玉ちゃん・・・今日も練習して帰るなら俺も付き合うよ！」
「ミツ、ありがとう」
そして、あの日から、二人の距離がより一層近くなったことも俺は感じ取っていた。北山が玉に助けてもらった恩義から信頼を持ったのだと初めは思っていたが――それ以上の感情が二人の間に芽生えているようで気が気でなかった。
結局あの日のことについて、北山はその後も口を開こうとはしなかった。攫った男たちに酷い目に遭わされたかけたことは察していたので、あまり強く聞き出そうとは思ってはいなかった。ただ、北山家なのかそれとも藤ヶ谷家なのか、警戒する方向を確認するためにも、何が原因で北山が襲われたのか聞きたかったのに――犯人どころか、その後、玉に送り届けてもらうまでのことについても何も話そうとはしない。今まではお互いに秘密を抱えるような真似はしなかったはずだ。いつでも何でも話し合って、二人で喜びも苦しみも分かち合ってきて支えあってきたのにどうして――
「練習ならみんないたほうがいいだろ！？俺も付き合うよ、玉！」
「俺達も！」
藤ヶ谷は？とでも言いたげな北山の瞳は、キラキラと輝いていて――断る理由もなく俺は頷いた。俺と北山の声に、玉の声が重なって、四人の声も合わさって、いつの間にか今までに感じたことのないハーモニーを奏でだしていたのは、全員が感じているところだろう。いつの間にか、俺達のグループはアカデミーの中でも群を抜いて注目をされるようになっていった。北山と二人だけのときとも違うのは――周囲の目が家に拘らずに認めてくれるようになったというところだろうか。紛れもなくその中心にいるのは――玉だ。玉がまるで大きな翼でも持っていて、俺達を新しい世界へ導いていくような、そんな錯覚を覚えてしまう。
『大丈夫、藤ヶ谷は心配しないで・・・もしかしたら、俺達の運命が変わるかもしれない』
「北山・・・」
俺は運命なんて変えなくていい。変えたいと思わない。お前と運命の鎖で繋がれていた方がよい。
それでも、一刻一刻とひびが入っていく鎖の軋みの音が聞こえるかのようで、日に日に俺は苦しみの渦に落ちていった――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
