2-another-�� side:K ページ28
2-another-�� side:K
「玉ちゃん・・・」
俺は本当にそんなに優しい言葉を投げかけてもらえるだけの価値はあるのだろうか、と思わず瞳から涙を零してしまう。家に翻弄され、がんじがらめにされて、危険な目に遭わされてもどこへも逃げられず、少しずつ汚れ落ちていく自分の全てをその言葉が浄化してくれるような気がした。俺の歌が好きだと言ってもらえるだけで救われる。歌だけは誰にも奪われない、俺の自由の象徴のようなものだから――
俺は震える手で優しく包み込んでくれる玉の手にそっと自分の手を重ねた。
「玉ちゃんの方が・・・天使に見えるよ」
この街の何のしがらみにも縛られず、自由にゆるふわと飛びまわっているかのようなその姿はまるで背中に大きな羽根でも生えているのではないかと思ってしまう。こうして包み込まれていると、まるで自分の背中にも羽根があるような錯覚を覚え、もしかしたら自分も飛べるのではないかと思えてしまう。いや、もしかしたら、俺は玉にこうして抱き締められたまま、連れ去って欲しいのかもしれない、と心のどこかで思っていた。運命の鎖から解放されて、憧れていた自由な世界に玉と一緒に行くことができるなら、どれだけ幸せなのだろう、と。
そうして俺が自由になれたら――同じ運命の鎖に繋がっている藤ヶ谷も自由にしてあげることができるかもしれない。俺のことなんかに囚われず、自分の好きなことや、やりたいことで満ち溢れた人生を自由に――きっと喜んでくれるに違いない。
「ミツ・・・俺、ミツのためにも頑張るから。だから傍で応援してくれる？」
「うん、もちろん、玉ちゃん・・・俺でよければ」
「・・・ミツだからお願いしているんだよ」
はい、と返事をして、俺は玉に肩を抱かれるまま寄り添った。玉はそっと反対の手を俺に差し出してくれる。指先を絡め合わせ、見つめあう視線にコクッと頷いた。そして、緩やかに引き寄せられるまま、俺は玉の胸板に顔を寄せていた。ドクンドクン、と速い鼓動を打つ玉の心臓の音に心が穏やかになっていくのを感じながらそっと口元を緩ませた――
「温かい・・・玉ちゃん・・・ありがとう」
はにかんで微笑む玉の表情に、俺の鼓動は玉のものよりも早く脈打っていく。この気持ちは一体何なのだろう。玉への感謝の気持ちなのか、憧れなのか、それとも――
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
