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新入生の二人は、早くアカデミーに慣れたほうが良いだろうということで、俺たちのグループに入ることになった。それも偶然の因果なのか・・・玉も宮田もあっという間に俺たちの中に溶け込んでいた。まるでそうなることが運命であったかのように。
玉と宮田は俺と北山のように幼馴染らしく、宮田は玉がこの街に引っ越しをすることになったのでついてきたという。玉がこの街に来た理由は家の事情なのか、本当にこのアカデミーに入って歌うたいを目指したかったのかは、本人がいつも適当にはぐらかす。だが、玉の歌声は俺たちとはまた違う声域を持ち、歌うたいを目指すと言っても過言ではないほどとても優しく響く音色を奏でていた。見た目のかっこよさと柔らかい歌声に惹かれる女子も多かったようで、いつの間にか玉の周りには人の輪ができるようになっていた。だが――
「俺、人見知りだからさ・・・」
本人もあまり前に出ることとかそんなに好きではないらしく、心許したら結構話せるし大切にするんだけどね、といつも穏やかに笑っていた。そう意味だと、俺たちは割とすぐに打ち解けてくれたんだなと思う。
とりわけ北山は遠慮なく話しかけてくる玉の存在がとにかく物珍しいらしく、いつも瞳で玉を追っていることが多くなった。一緒にいる時間が変わっていないのに、俺と北山が二人きりで過ごす時間は短くなっていったのは、そこに玉が入り込んできたからなのかもしれない。
今も北山は玉とテーブルを挟んで向かい合わせに座り何かを話している。
「ねぇ、北山・・・さんの下の名前教えてよ」
「えっ、玉森くん、何で？」
「みんな名字でしか呼んでないから分からない」
「んー・・・名字で呼んで。みんなそうしてる」
お家柄？と玉は唇を尖らせているようだった。もしかしたら、北山の下の名前を知っているのはこのクラスでも俺だけではないのかと思った。そのくらいに、家の力は大きく、周りの人間にとって俺たちはあくまでも“藤ヶ谷”であり“北山”なのだ。個の存在と言うよりは家の名前があってそこに俺たちの存在が紐づけられているような感じだ。
「ねー、教えて」
玉は北山の両手を取りグッと顔を近づけて見せる。驚いた所以か北山の頬がポッと赤く染まったのが分かった。北山が困っているな、と俺は仲裁に入ろうと二人に歩み寄った。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
