Cherry Lips～赤い果実～（玉北） (ページ17)

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「初めまして、玉森裕太です。で、こっちが俺の下僕で・・・」
「玉っ、しょっぱなからそのフリで自己紹介するの辛いわ！・・・宮田俊哉です・・・」
　よろしくお願いしまーす、と仲が良さそうな二人組は揃って頭を下げた。
「うわ・・・凄い背も高いし色白な男の子だね・・・」
　下僕じゃない方の子、と北山は少し感嘆に近いため息を吐いた。下僕の子も色白く髪の毛がサラサラしている感じだった。少々肌が日に焼けている俺たちとは対照的なイメージだった。
　二人の席は一番後ろだったようで、俺たちの脇の通路を通って席に向かう。すると、前を歩いていた下僕じゃない方の子がピタッと俺たちの横に立ち止まる。下僕の子はその子の背中に顔をぶつけたようで顔を抑えて痛がり始めた。
「んー、何で二人は制服の色が違うの？」
　えっ、と俺たちはびっくりして新入生を見つめ返した。俺たちにそんなラフに話しかけてくる人が周りにいなかったからだろうが――だが、街の外から来ている彼らからみれば、俺たちはただのクラスメイトになるのだから仕方がない。
「あっ、えーっと、この制服は成績が良いと着れるんだよ」
「ふーん、俺も赤がいいなぁ」
　あくまでも服の色の話をしているのだと思うが、入学早々赤の制服を着たいと発言する新入生にびっくりしたようで動揺がクラス内に広がっていく。新入生の視線が、不意に北山に向けられる。
「・・・可愛い」
「ちょ、ちょっと玉、さっき先生に説明を受けたじゃん。赤い制服の子は優秀でしかもこの街の長の息子さんたちだって・・・」
　新入生にもそんな説明しているのかと思うとげんなりしてしまったが、それにもかかわらず話しかけてきた彼の度胸に驚かされる。
「・・・あ、女の子だから赤とかじゃないんだ」
　というか女の子かと思った、と一人で疑問を出して一人で解決して自分の席へ向かう玉森と名乗る少年に北山は目を丸くしていた。
「・・・藤ヶ谷、俺、女の子に見えたってこと？」
「・・・見えなくはない・・・かも」
　だから俺は苦労しているんだ、と言いたかったが、北山はその辺の自覚がないことも分かっていたからそれ以上は何も言わなかった。北山の視線は転校生をまだ追っている。転校生は席に座ると、そんな北山に向かってにこっと微笑んだ。恥ずかしそうに北山は視線を前の席にいる俺に戻す。
「・・・玉森・・・裕太くん・・・か」
　北山は新入生の名前を噛み締めるように呟いた。

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