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――数か月前。
「ねぇ、藤ヶ谷さん、北山さん、今日新入生が来るらしいですよ」
千賀が席に着きながら前後の席に座っている俺と北山に声をかける。
まだ平和だったころ、俺たちは歌うたいの資格を得るためのアカデミーに通っていた。基本的に年齢も性別も問わない養成所みたいなもので、グループを組んで卒業をすれば一人前の歌うたいとして認められる。大概はそのときに一緒にグループを組んでいたメンバーとその後も一緒に活動することが多い。
その中でもやはり街の長の子供たちということもあり、俺たちは別格に扱われることも多く、ずっと二人でいることが多かった。グループが一緒のメンバーですら最初は緊張気味だった。少しずつ打ち解けていくと、気さくに話ができるようになっていったが。
「へぇ、珍しいね。この街に外から来るなんて」
「女の子だといいなぁ」
渉とニカも笑いながら話に混ざってくる。そうだねー、なんて言いながら北山もニコニコと楽しみにしている様子が伺える。俺も街の外からくる新入生には興味があった。このアカデミーに入るために外から来たとしたら余程歌声に自信があるのだろう。
「でもさ、ライバル増えちゃうと余計に遠くなっちゃうかも・・・赤い制服」
「まぁ藤ヶ谷さんと北山さんくらい別格にならないと無理っしょ」
通常のアカデミーの生徒が来ているのは紺の制服だったが、上位の生徒は赤の制服が貸与されることになっていた。このクラスで着ているのは俺と北山だけ。それもあって余計に周りから一歩引かれた位置づけになっていたのかもしれない。
北山には藤ヶ谷がいつも難しい顔をしているからじゃないの、とは言われたが。正直俺は逆に北山の警戒心のなさを心配していた。昔から北山は男らしい性格ではあるが、可愛らしい容姿の所以か、誘拐されそうになったり襲われたりすることも多かった。いつ何時――それこそ“藤ヶ谷”家の刺客が北山を狙うか分からないのに、のほほんと横に立っているわけにもいかない。そういう意味では、周りには人がいない方が助かるけれど。
担当の講師と一緒に俺たちより少し年下に見える男の子が二人部屋に入ってくる。何だ男か、とニカのため息が聞こえた。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
