2-another-�� side:K ページ14
2-another-�� side:K
ようやく口を開いた藤ヶ谷の声はいつにも増してクールな声色で、俺は怒らせたかも、と委縮してしまう。
「や、その、藤ヶ谷は女の子にも人気があるし、俺のためだったら、気にしないで欲しいかなって・・・」
家の運命を真面目に背負わなくても、と俺は藤ヶ谷に対して申し訳なく思ってしまっていたところがあった。
「・・・少なくとも俺はこの運命に感謝している」
お前と結ばれることができるなら、と俺に歩み寄った藤ヶ谷は俺の顎を指で掬いあげた。
「今すぐ証明しようか、北山」
「えっ、あっ・・・！やっ・・・！！」
藤ヶ谷の整った顔が眼前に迫り、俺は思わず仰け反ってしまう。ベッドに背をつけると、藤ヶ谷がすかさず覆いかぶさってくる。両頬に藤ヶ谷の両手が触れて、俺は心臓の鼓動が跳ね上がるのを感じた。
「藤ヶ谷っ・・・！」
「運命から逃れたいと思っているのは・・・お前じゃないのか、北山」
両頬を押さえられていては、俺は顔を背けることもできず、藤ヶ谷の言葉を正面から受け止めるしかなかった。そんなことない、と唇を動かしながらも、心の奥底ではそうなのかもしれない、と俺は“北山”と“ミツ”の間で揺れ動いているかのようだった。
だから、今、藤ヶ谷に顔を寄せられても、拒む理由がなくて――ギュッと固く目を瞑ると、藤ヶ谷の唇の感触は、自分の唇には触れず、額にそっと寄せられた。驚いて目を開けると、藤ヶ谷がとても優しい瞳で、少し困ったように微笑んでいた。
「・・・意地悪してゴメン」
そろそろ部屋に戻る？と俺の上から身体を退けた藤ヶ谷に聞かれ、俺は身体を起こしながら頷くしかなかった。足早に藤ヶ谷の部屋を後にする。
こんなに想ってもらっているのに、俺は自分の気持ちが全く分からない。俺が女の子だったらこんなにも悩まなくて済んだのだろうか。ずっと昔から一緒だった藤ヶ谷――婚姻なんて関係性がなくてもずっと仲良く手を繋いで歩いて行けると思っていたからこそ、急に距離が近くなって戸惑っているのかもしれない。
「謝らないといけないのは・・・俺の方だよ、藤ヶ谷」
ごめん、と扉の向こう側にいる藤ヶ谷に俺は頭を下げた。
――俺が本当に好きなのは・・・
next→side:F
2-another-�� side:F→←2-another-�� side:K
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
