2-another-�� side:K ページ12
※2話目から別設定verとなります。
あとがきに少し書かせていただきましたが、藤ヶ谷さんと北山さんが婚約者同士という設定です。
CPは玉北←藤になります。
2-another-�� side:K
「ダメ、だよ、こんなときに・・・」
俺は真剣な瞳で迫る玉をそっと押しのけていた。こんなとき、今の状況で――と言いながら、当たり前のように平和にいつでも誰でも歌うことができていた時代であっても、俺は玉の視線から目を逸らすことしかできない。拒むことしかできないのだ――
「・・・ガヤがいるから？」
「玉ちゃんも知ってるよね？俺と藤ヶ谷は家が決めた婚約者同士だって・・・」
“藤ヶ谷”家と“北山”家は代々この街を守ってきた家系であって、交流の証のように時折、家同士で婚姻関係を結び、その地位を確固たるものにしてきた。今は“藤ヶ谷”家が長として街を統括している。だが、俺たちの世代においては両家に男児しか生まれず――特に俺は唯一の“北山”家の子として誕生した。両家の交流パーティーで両親も次の世代の際に女児が生まれたら両家で婚姻をと言っていた話をまるで他人事のように俺は聞いていた。だが、あれは忘れもしない、俺たちが婚姻できる歳になったあの日――
『俺は、北山と結婚します』
俺は突拍子もない藤ヶ谷の言葉に、自分の耳を疑った。藤ヶ谷は酒にでも酔っているのではないかと、慌てて俺は藤ヶ谷に駆け寄る。すると、突然その腕の中に抱き込まれ、この話を受け入れて欲しい、と囁かれる。酒に本当に酔っていた周りの親族たちの盛り上がりに促され、肯定も否定も――藤ヶ谷の真意も分からぬまま、俺たちは婚約をしたことになっていた。
「知ってるよ。だから二人が名字で呼びあっていることも」
俺たちは長男同士だったから、個人というよりも周りを含めて家を背負っている想いが強かった。周りも当たり前のように俺を“北山”さんとか様とか呼び捨てとか――そう言えばそれを最初に破って俺を“ミツ”と呼んだのは他ならぬ玉だった。酷く懐かしい平和だったころの記憶がよみがえる。街の外からやって来た玉にとってはさぞかし俺たちの関係が不思議に思えただろう。
「・・・だったら・・・もう困らせないで」
もう先に戻るね、と俺は顔を背けて、足早にこの場を去ろうとした。次の瞬間、俺は玉に背中から抱き締められていた。
「・・・俺が知りたいのは、ミツの本当の気持ちだけだよ」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2017年12月6日 0時
