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「ダメ、だよ、こんなときに・・・」
「・・・いつ言えなくなるか分からないときだからこそ、今、言いたいんだ」
「玉ちゃん、俺・・・」
「ミツ・・・」
グッとミツを抱き寄せ顔を近づけると、唇に感触が当たりびっくりして目を開いた。ミツが手にしていたリンゴが押しつけられていた。ミツはそのリンゴに負けずとも劣らずほど顔を真っ赤にしている。
「・・・ごめん、玉ちゃん。まだ心の準備が・・・」
他の人にも配るから先に戻るね、とミツは顔を背けて走り去ってしまった。俺は壁にもたれかかり、星の浮かぶ空を見上げる。
「・・・一番欲しい果実はまだ手に入りそうにないな」
ミツのくれたリンゴに歯を立て、その甘酸っぱい味を噛み締める。リンゴの数を数えたところによると、俺に一番に持って来てくれたのだろう、と思うとそれだけで少し嬉しくなる。平和になってまた当たり前のように歌えるようになったら、その時はミツに――
すると、階下から聞きなれた声の叫び声が聞こえ、俺は慌てて立ち上がった。屋上から下を見下ろすと、フードがついたマントを羽織った不気味な姿をした連中が自分たちのいる建物に駆け込んできていた。
「・・・まずい!!」
俺は慌てて先に戻ったミツの後を追った。玉、無事か!とガヤが駆け寄ってくる。
「玉っ!下で渉たちが四人とも捕まった!」
「ミツは・・・!?」
「探し物はこれか?」
二人で顔を見合わせて振り向いた。その手には先ほどミツが持っていたカゴが握られ、そのカゴから取り出したリンゴを一つ俺たちに向ける悪の組織の男――そのリンゴを足元に落とし踏みつけて見せる。その背後に視線を向けると、数人の男が立っており、その中心に――
「ミツっ!!」
「北山!!」
手首に手錠をはめられたミツが膝をついて囲まれていた。そして、その中の一人が無造作にミツの髪の毛を背後から掴み、顔を無理矢理上向かせた。
「・・・玉ちゃん・・・藤ヶ谷・・・!ごめん・・・」
ミツ!と思わず駆け寄りそうになる俺をガヤが制す。俺はハッとして改めてミツに視線を向けると、ミツの喉元に男の手がかけられそうになっていた。
「・・・よし、その二人も捕らえろ」
すぐに取り囲まれ、俺とガヤにも手錠がはめられる。ミツも含めて手錠同士に鎖を繋がれ、ふらつきながら俺たちは連行される。
「・・・みんな!」
「玉、ミツ、ガヤさん!」
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作者名:ほわわ | 作成日時:2017年12月6日 0時