まえあし短編集 (ページ43)

今日:14 hit、昨日:0 hit、合計:117,619 hit

struggle jointly番外編VersuSおまけ23（藤→北←玉）ページ43

struggle jointly番外編VersuSおまけ23

「ふ・・・藤ヶ谷・・・！？」
「・・・太輔、ついに・・・」
　ギュッと強く北山を抱きしめる藤ヶ谷の姿に、横尾は少しだけ後ずさりをして二人と距離を置いた。突然藤ヶ谷の腕の中に抱き込まれた北山は、何度も目をパチクリさせる。藤ヶ谷は抱きしめている北山の耳元にそっと囁きかける。
「・・・ずっと北山を守ることが俺の使命だと言い聞かせて、本当は自分を抑え込んでいたのかもしれない」
　そうでもしないと自分に歯止めがかけられなかったかも、と藤ヶ谷は苦笑いを浮かべた。ふと藤ヶ谷は北山の部屋にこっそり入り込んでいたときのことを思い出してしまう、やっていたことは正直褒められたことでは全くないが、目の前で愛しい人が眠っていて唇に触れていても、それ以上のことをしなかったのは――純粋で優しい北山の傍にいたかったからに他ならない。だから、玉森の言っていることは大体あってる、と藤ヶ谷は投げかけられた言葉を思い出す。屋敷の周りの壁を高くしたり、勝手にバーベキューを始める弟組を追い返したり、そうすることで、自分で自分に幾度となく守護者だと思い込むことで、結ばれるか分からない北山への不安を少しでも緩和しようと思っていたのかもしれない。結果的にはそれが逆効果になって、玉森に告白は先を越されるし、お腹を空かせて彷徨わせてしまうし――守護者失格だ、と藤ヶ谷は北山の額にコツンと自分の額をぶつけた。
「ゴメン、先に饅頭、食べていてくれて良かったのに・・・待っててくれたんだね」
　ちょっと食べるかどうかは悩んだけどね、と北山はクスッと微笑んだ。
「・・・でも藤ヶ谷と一緒に食べるって約束したから、俺・・・」

“・・・ずっと、待ってたよ”

　その言葉がいつもの妄想なのかそれとも――自分の告白に対する答えならいいのに、と藤ヶ谷は好き勝手にいつも考えてしまう自分に呆れるようにため息を吐き苦笑いを浮かべた。
「・・・藤ヶ谷。俺、そんな気持ちで藤ヶ谷が俺のことを守ってくれていたなんて気がつかなかった。正直・・・時々外に出られなくて窮屈だなって思ってたし・・・」
　ごめんね、と北山は淋しそうな瞳をして、藤ヶ谷の背中にそっと手を回した。より近づいた距離に二人の心臓の音が同じ音を奏でて高鳴っていく。

next 番外編おまけ24へ