まえあし短編集 (ページ16)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:117,606 hit

struggle jointly番外編VersuS④（藤→北←玉）ページ16

struggle jointly番外編VersuS④

「・・・みっちゃん！！」
「げっ、よこーさん！？」
　見つけた！と息を切らし横尾が北山に駆け寄ってくる。かなり顔がキレた状態の横尾に北山はビクッと身体を震えさせる。
「ご、ごめんなさい・・・」
「無事だからいいけど・・・弟組に見つかる前に帰ろう・・・って！？」
　横尾が周りを見渡すと明らかに弟組の格好をしている二人が立っていた。むしろ名前を大声で呼んでしまい、決定打を出してしまったようだ。
「やっぱり兄組のミツ姫か・・・そんでそっちは横尾さん」
「え、ばれてたの！？」
「いや、衣装で分かるよね」
　それもそうか、と北山は仮面を外した。みっちゃん俺の後ろに、と横尾は北山の前に立ち番傘を構える。北山にも一本差し出した。気がつくと二階堂はベースを置いて銃に持ち替えている。千賀も銃を構えた。
「・・・ミツ姫を渡してもらおうか、横尾さん」
「お断りだよ、うちのお姫様なんだから」
　俺は姫じゃない！と北山は抗議するが、誰の耳にも届いていないようだった。
「・・・みっちゃん、俺が二人を引きつけるからその間に逃げて」
「えっ、俺も戦うよ！」
「狙われているのはみっちゃんだから・・・それにみっちゃんに何かあったら太輔が悲しむから」
　よこーさん、と北山は横尾の衣装をギュッと掴んでいた手をそっと離した。
「うん・・・」
　今だ、と横尾は千賀と二階堂に向かって走る。銃を構えた二人から放たれる弾丸を番傘で弾きながら二人を威嚇する。その隙に北山はその場から離れるように走り始めた、その時――
「逃がさないよ、ミツ」
　北山の進行を妨げるように発射された弾丸。びっくりして足を止めた北山の前に玉森と宮田が立ち塞がる。
「玉っ・・・！」
「・・・ミツ、やっと会えた・・・！」
　驚いて身体を竦ませる北山とは対照的に、玉森は両手を広げ嬉しそうに微笑む。
　ある日の練習中、互いに正体に気がつかないまま北山と玉森は一緒に踊っていた。玉森からすればいわゆる一目ぼれに近い状態だったらしく、帰り際に突然北山を抱きすくめてキスを求めた。何とか逃げ出した北山だったが、びっくりしたらしく泣きながら帰っていく。涙を流す北山を見て藤ヶ谷は激昂し、北山を外へ出さないことを決め、弟組を余計に敵視するようになったのだった。

next 番外編⑤へ