まえあし短編集 (ページ14)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:117,613 hit

struggle jointly番外編VersuS②（藤→北←玉）ページ14

struggle jointly番外編VersuS②

「みっちゃんが鈍すぎるんだよね、本当に」
　藤ヶ谷に溺愛されていることも、弟組に狙われていることも全く気がついていない純粋な兄組のお姫様。北山を宥めたり、藤ヶ谷に気を遣ったり、間に挟まれている俺の気持ちになって欲しい、と横尾は盛大にため息を吐いた。味噌汁を少しだけお椀に掬い味見をしていると、使用人の一人が慌てたように台所に飛び込んできた。
「た、大変です！北山様が外へ・・・！」
　その言葉に口に含んだ味噌汁を吐き出しそうになりながら、横尾は慌てて振り向いた。
「・・・え、本当に？」
「は、はい。ローラーを履いて仮面をつけて・・・」
「顔がばれなきゃいいって問題じゃないのに・・・ああ、もうあの子は！」
「いかがいたしましょう、藤ヶ谷様に・・・」
「いや、まずい。下手に弟組と接触したら戦争になりかねない」
　俺が行くから太輔には黙っていてくれ、と横尾は身につけていたエプロンをその使用人に預ける。
「みっちゃん、とにかく、弟組にだけは近づかないでくれよ・・・！」

***

「もう、本当にさー、藤ヶ谷もよこーさんも過保護なんだよな」
　俺は最年長ですよ、と北山は頬を膨らませたまま、広場に向かってスイスイとローラーで走っていた。
「まぁ仮面もつけているし、俺だって分からないだろう」
　狐の仮面をつけて広場に到着した北山はタップダンスの練習場についた。ここまでくれば大丈夫だろう、と仮面を外して腕を伸ばして大きく深呼吸をする。
　さてさて練習しよう、と北山は音楽を頭の中に思い浮かべながら、軽快にタップを踏んでいく。
「ふぅ、いい汗かいた・・・あれ？」
　自分の足が止まってもタップ音が聞こえ、北山はそちらに目を向けた。ちょうど反対側に白く光沢のあるストーンがついているジャケットを着た少年が何人か踊っているようだった。北山は仮面をつけ、そちらに向かって走り出す。
「よし、これで今度の発表会はいいところまでいけそうじゃん」
「いやいや、狙うなら優勝っしょ」
　今度の発表会に出る他のグループか、と北山は少しだけ離れた場所からその姿を見つめる。よく見たら弟組の千賀と宮田だった。一緒に練習に混ざろうかと思ったが、さすがによこーさんにも止められているし、すぐに引き返そうと思った時だった。
「・・・何をしてるの？」

next 番外編③へ