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追いかけているといつの間にか林を抜けた。
眠気なんてもうとっくの昔に冴えてしまい、光を追い続ける自分の目はひどくチカチカしている。
進めば進むほど光の輪郭は濃くなっていく。実体を伴わない未知の光は私と一定の距離を保ちながら逃げ続けた。
ほぼ無意識に足を動かしていた私は、ふとした瞬間に気づくのだ。
(あれ…? このまま進んだらどうなる? 私はこの先へ行ったことがない)
オンボロ寮の裏の林どころか、それを抜けた先に何が待っているのかも私は知らなかった。
赤き光は止まらない。閃光を周囲に飛び散らせながら私をどんどん未知の世界へといざなっていく。
(そういえば学園長…真夜中は下手にオンボロ寮から離れるなって言ってたっケ。でもそれってナンデだったんだろう)
もういい。考えルことすら面倒くさい。
あんな怪しい学園長の言葉なンて、信じル必要モナイ。
毛むクじゃラのマモノも、胡散臭イ生徒も、人外の生き物たちモ……。
ダカラ待ッテ、私ノ光……
「危ない!」
−−そんな声が聞こえた刹那、顔の横を何かが掠めた。
それは一点の揺らぎもなく赤い光めがけて飛んで行き見事光のど真ん中に命中する。
私は沼から引きずり出されるような感覚で意識を取り戻し、ヒュッと喉を鳴らして足を止めた。
同時に手に持っていたスマホの灯りがパッと付いて。
自分の置かれた状況を理解した瞬間、手足が震えて使い物にならなくなる。
視線を下に落とすとそこは、断崖絶壁だった。
真っ暗な闇が地獄の果てまで続いていきそうなほどの禍々しさに再び意識を飛ばしそうになる。
「あ……あぁっ…」
「マドモアゼル。気をしっかり持って」
混乱する私の耳に突然、聞き慣れた先輩の声が入り込んできた。
後ろから腕を引かれ、足場の悪い崖の淵から安全地帯へと移動させられる。
しばらくその人に手を引かれるまま歩き続け、林を抜けてオンボロ寮のすぐ真後ろまで来た。
「ここまで来ればもう大丈夫」と優しく声を発した彼の手袋に包まれた両手が私の肩にそっと置かれる。
こちらを見下ろす翡翠色の瞳は夜の闇の中でも一際明るく輝いていた。
「真夜中は出歩くなと、先生陣に言われなかったのかい?」
ルーク・ハント先輩。
彼は真夜中を彷徨う悪魔のいざないから、私を救ってくれた。
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作者名:五条薫子 | 作成日時:2020年9月23日 18時