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どのくらい座り込んでいたのだろう。
はっきりしない意識の片隅に雨音を捉えて、現実に引き戻された。
雨、降ってきたんだ。
ベランダに出て、濡れないようにタバコに火を点けた。
深く吸って吐き出すと、頭が少しスッキリする気がした。
降り注ぐ雨が、ベランダから見える街の明かりを和らげて、ひとりぼっちになってしまった気がしていた私の気持ちを和らげた。
倫也さんに、連絡しなきゃ…
部屋に戻ってバッグに仕舞い込んでいた携帯を取り出す。
何件かの着信とメッセージ。
その殆どが倫也さんだった。
『電話出て。』
『多分誤解してるから。』
『Aちゃん大丈夫?』
『ごめん。』
最後のごめんが何を意味するのか考えると、胸の辺りがチクッと痛んだ。
電話をかけ直そうとして、手を止めた。
何から聞けばいいんだろう。
誰ですか?何してたんですか?どうして腕を…
どんどん思考が散らかって、画面を消した。
「メイク落とさなきゃ…」
受け取り手のいないその言葉は、そのまま静かな部屋に吸い込まれた。
いつもより、体が重い気がする。
洗面台に立って鏡を見ると、疲れた顔の私がいた。
目は腫れてるし、鼻も真っ赤。
メイクは崩れてぐずぐずだった。
「…酷い顔…」
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高木(プロフ) - emiさん» 素敵なお言葉をありがとうございます。まだまだ書きたい話があるので、まだまだお話は続くと思います。話数の割に展開が緩やかですが、気長に見守っていただけると幸いです。今後とも宜しくお願い致します! (2020年6月2日 6時) (レス) id: 34107c5216 (このIDを非表示/違反報告)
emi(プロフ) - すごく良かったです。一気に読んでしまいました。水族館の帰りの告白からのところ、好きでした。あと、喫茶店で、主人公の本音が溢れてしまうところ泣けました。どんどん読み進めてしまって、もったいないことしたかも。。。って少し後悔。でも、我慢できなかった〜。 (2020年6月2日 4時) (レス) id: ce60033505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高木 | 作成日時:2020年5月31日 9時