先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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「それで、ね…」



いつもの席、いつものテーブル、いつものコーヒー


ちょっと違うのは先輩の表情


何か言いたげにしてるくせに、じっとコーヒーのカップを眺めている先輩



「俺、Aにも時々会いたいし、でも勉強もしないといけないから外にはあまり出られない。だから…ううん、本当のことを言うよ」



俯いていた顔を急にバッと私に向ける先輩


決心したような、腹を括ったかのような、そんな顔


私にはその先輩の姿が太陽のように眩しくて。


これから先に起こることがなんとなく予想できるような気さえしてしまう



「俺、Aのことが好き」

『え？』



ドキリとした


心臓が刀で斬り刻まれたかのように、私の胸は音を立てた


…てっきりもっと、なにかこう……


私が思っていたものではなくて…




「好き、だからきみに会いたくて。ずっと俺の隣にいて欲しいって。気がついたらそんなことばっかり考えてて、俺のものになって欲しいんだ」




嘘偽りのない目


私のことを好きだと言うその口


いつもあんなにヘラヘラと胡散臭い笑顔を撒き散らしてるくせに、今日はいつになく真剣なんだ


…わかってる、ちゃんと先輩が嘘ついてないってことくらい


だって私も……



「もちろん返事は今すぐじゃなくていい。ずっと、ずっと待つ」

『…ありがとうございます。嬉しい…すごく。でもやっぱり考える時間が欲しいです。自分の気持ちと向き合いたい。だから…「うん！わかった！」



無垢な子ども


童という言葉が似合う笑み


先輩の二つ返事に心が軽くなる



「いつでも連絡して、俺は待ってるから。今日はもう帰ったらいいよ、寝てないんだろう？早く寝て疲れをとるといいよ」

『ありがとうございます』

「じゃあねえ〜」



なんだか無理矢理家に帰れと言われているような気がするけど


私は席を立って店を出た


足が妙に軽く感じた






店に残された童磨はカップを見ながら、Aとは違う気配を感じとる


さっきまで目の前にいたAの席に座る人____





「なあに、善逸くん」




黄色の少年









〈先輩は教祖らしい 弐〉へ続く

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