先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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放課後



みんなテストが終わって、開放感に溢れた顔をして帰る人もいれば、赤点だ…と絶望しながら帰る人、三者三様だった


明日からはテスト返しと、ちょっとした授業を受ける日々…


そんな毎日が終わったら、私にとってはあまり嬉しくはない夏休みがやって来るんだ


先輩のせいで赤点補習が待ってるかもしれないけど。


まあそれはそれで、家にいなくて済むからいいのかもしれないな




「A？」

『はい？』



先輩の呼びかけで我に帰る


なにか言ってたかな、ボケーっと考え込んじゃった…



「今日はなんだか上の空だね？」

『あ、いや…』

「なんかあった？」



…言えない


夏休みが嫌だなんて、


家族が、いや、お母さんが怖いから、嫌いだから、なんて。


言えない



『テスト終わりで疲れてるのかも？』



大丈夫かと心配そうに顔を覗く先輩に、無理に笑って誤魔化してみせる


別にこれが初めてなわけじゃない


これまでだって何回も休みはあったし、経験してるじゃないか。何年学生やってきてるのよ




「…そっか。そうだ、もうそろそろ夏休みでしょ？その…良かったらなんだけど…俺の寺院に来ない？」

『え？』

「ほら、俺は教祖になる人間だから勉強は必要ないけど、でも実は俺、心理を学びたいんだ。心理を学んで、人を助けたいって思ってる。だから大学に行きたくてさ…」

『いいじゃないですか！』



自分のやりたいことを目を輝かせながら、恥ずかしがりながら話す先輩は少しばかしカッコよく見えた


心理を学んで…それで…私のことも救ってくれる？


私の心も全部読み取って、私の全てを受け入れてくれる？



「ほんとに！？」

『はい！』



将来の夢があるなんて素敵だ


私にそんなものはないし、ただ漠然と今を生きることしか考えられないから


教祖になることは生まれた時から決まっていたけど、そこから何か目標を持てるのは大人で、私にはないものを持っているんだ


童磨先輩は私よりも大人なんだ

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