先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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「ねえ、A？」

『あー、あれです。なんかふと目に入ったんです』



かまぼこ隊に、いや正確に言えば善逸に呼ばれて…それで一斉に視線が私に向けられて…


その時目に止まったあの本


たまたま見つけたというよりか、



『なんとなく、その本に呼ばれているような気がしたんです。ほんとに、なんとなく』

「そうなんだね〜」




いや絶対興味ないだろ(笑)


私ではなく、どこか遠くを笑顔で見つめながら相槌をうつ先輩


自分が答えたから興味本位で聞いてみた、みたいな感じじゃん



「俺たち、この本に導かれてるね」



心の中で変な悪態をついていると、先輩は突然こんなことをボソリと言ってのける


相変わらず焦点はどこかわからない遠くのままだけど、確かに導かれているような気がしてしまう


あの本とはなにか繋がりがあるような気がして、手に取ったんだ


その場に居合わせたのが童磨先輩。


それは紛れもない事実




『そうですね、なんだか不思議です』



もしあの時、私が図書室に行っていなかったら


善逸たちが来ていなかったら


冨岡先生が怒っていなければ


善逸が私に話しかけていなければ


私はあの本を見つけていなかったし、童磨先輩にも出会えていなかった


この中のどれかひとつでも欠けていたら、今のようにはなっていなかったんだ



人生にはたくさんの分岐点がある


それは修正可能な分岐かもしれないし、運命の分岐点かもしれない


ほら、この分かれ道みたいにわかりはしない


そこから無意識に選択して……





気がついたらもう校門の前だった


左右に伸びる道


私は左へ進まないと家に帰れない




『じゃあ私、こっちなんで』



童磨先輩に手を振り、私は背を向ける


もうこれで先輩と関わることはないかな


本を読んでいなければ出会ってなかった私たち


絶対に知り合うことはなかったんだから。


あの枝分かれした道は、まわりに回って最初の分岐点よりも前にたどり着く


それは私が図書室には行かなくて、善逸や炭治郎、伊之助、はたまた童磨先輩とも会わないルート


元に戻るだけでしょう？これでいいの


連絡先も残しておくのもなんかアレだから、帰ったら消さないとな


…でもなんかモワモワするな


名残惜しい？悲しい？


枝分かれして伸びた道は、どうしてもそちらのルートへ行くのを拒む。戻ろうとしてくれない


行かないとダメなのに


私は無理に一歩踏み出す



「A！」



ほら、道は繋がらない

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