先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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これは



おてんば娘と




孤独な鬼の




美しくも儚い




恋の物語





最後のページをめくり終わった


本を閉じる


結局、あの本を借りてから5日かけて読み終わった


驚くほど鮮明にその情景が思い浮かぶし、あまりにも苦しくて気を失うのではないかと思ってしまった


童磨先輩と話す時もそうだけど、ほんとにいきなりなんなんだろう？


私はすぐ近くに置いてあったスマホを手に取り、童磨先輩とのトーク画面を開く


まだ一言も会話してない、まっさらな状態


本当にただ、本の貸し借りのためだけに連絡先を交換したんだという事実が見てわかる


それが妙に心苦しくて


まあ変に関わらないと決めたのは私だし。これが当たり前の結果なんだけど


私は迷わず文字を打っていく


ポンと送信ボタンを押せば、すぐにつく既読マーク




［了解！］

［明日の放課後に図書室でいい？］




余分なことが一つも書かれていない、簡潔なメッセージ


そうだよね。なーんてガッカリする私は馬鹿なんだと思う



［大丈夫です］



心の揺らぎを隠すように、私もたった五文字で送り返した







放課後


カナヲに今日は部活も、助っ人もないから一緒に帰ろうと誘われたけど、事情が事情なので手厚くお断りした


ほんとにごめん。カナヲを信頼してないわけではないんだけど、あまり人に知られたくないから


なんて言い訳を心の中で並べて、図書室へ向かう




「あ、きたきた！」



ハァハァと息を切らしながら階段を上ると、童磨先輩はすでに待っていて、あの無邪気な笑顔で手を振られる




『すみません。待ちましたか』

「んーん、今ちょうど来た所だよ！」




嘘っぽいな、なんてね。


でも嫌な嘘のつき方ではないから。人を思いやる嘘




『よかったです。じゃあ、返すのでそのまま借りてください』

「うん、りょーかい！」



猫のように、いや、犬のように笑う童磨先輩


思えばこの人、いつも笑ってヘラヘラしてるな。


この間のあの真面目な表情を浮かべる姿を見たことがあるのは私くらいなんじゃないかと、変に錯覚してしまう


いや、誰しも見られたくない闇の一つや二つ…



考えにふける間、ピッとバーコードをかざす音が聞こえる



「じゃあこれ、俺が借りるので貸出手続きお願いします」

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