先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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【童磨side 続き】





「ねえ怖いよ善逸。助けてよ」

『っ！』



この声は…！


やっぱりAだ。Aで間違いない


声がするのはそこ。真っ白なカーテンで囲まれたあの中


あそこにAがいる…




「大丈夫だよ、平気。なんとかなるよ」

「んーん！ならないッ！！私はッ！！」




か細く、小さな声だけどしっかりと聞こえる


あの小さくて華奢な身体が震えているのだろう


声もかすかに震えていて、だんだん呼吸が荒くなっている



「ハァハァ…」




過呼吸…？


もういてもたってもいられない


Aの様子を見に行きたい


たった1枚のカーテンを隔てた距離にいるのに、俺たちの間には高く、分厚い壁があるようだった


お世辞にも爽やかとは言えない風が俺たちの間を吹きぬける


その風は鉄壁のカーテンを揺らした



『ッ珠世せ「先生！！！！」




俺よりも、いや俺のが先だったけど、俺の声をかき消してしまうほどの大きい声


黄色い子が叫ぶと同時に、珠世先生が肩をビクつかせる


そして、テープをジョキンと切り落とす音が鳴った


背筋がゾワゾワした



「童磨くん、テーピングはできたから、教室に戻れるかしら？」

『え、』

「今すごく調子の悪い子がいるの、戻れる？」



珠世先生は表向きは俺に選択を委ねているが、“ 戻れ ” そう言っている


目がそう語っているのだ


こうなったら痛いとか駄々をこねても無駄だろう




『わかり…ました』

「無理はしないこと。わかった？」

『はい』



珠世先生が立ち上がったのとほぼ同時、俺は立ち上がる


ゆっくりとドアへ向かいガラリと音を鳴らす


教室を出る直前に体を向き直す




『失礼しました』



同時に俺は保健室を見渡した。正確にはあのベッドの方


珠世先生があの鉄壁のカーテンを開け、中に入って行くのが見えた


その奥には黄色い子と……



気を失っているA



Aの手はダランと伸びきり、そして、黄色い子に抱きしめられている



すぐに騒がしくなる室内


俺は呆然と立ち尽くした


珠世先生は俺の存在に気がついたのだろうか



「童磨くん、ごめん。出て行って」



後ろを振り向くことなく、いつもの優しい先生とは違う強い口調で言われる


そこでやっと俺は我に帰った



『すみません』



俺は震える手でドアを閉じた



どんどん保健室との距離が遠くなって行く


わずかな隙間の中で、黄色い子と目があった




まるで敵を睨み付けるような、そんな目____

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