先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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『ただいま』



なんて言っても「おかえり」という言葉が返ってくることはない


食欲もないのでそのまま二階の自室に行く


カバンを床に置いて、制服から部屋着に着替える



…今日はすごく疲れたな


善逸に話しかけられて注目を浴びて、


そのせいで倒れて運ばれて


童磨先輩と本の譲り合いになって


なんか連絡先交換しちゃうし…



そうだ、本！読まないとな


カバンから本を取り出して、ページをめくる



ふーん。主人公の名前、私と一緒じゃん


婚約相手？が教祖なんだ。なるほどね


こっそり相手を見に行って、ちょっとドキってして…



ページをめくる手が止まらない


そして私の胸の高まりも。いや、締め付け？


なんだか心苦しい






“「きみのことが心配だったからねえ」”



“ 『私、結婚してもいいかなって思っちゃいました』”



“ 「きみも声を出して笑うんだね、俺は笑っているきみの顔が好きだ」”



“ 「きみは唐突だなあ。全く、調子が狂ってしまうよ」”






脳内で映像が再生される


まるでそのシーンを見たかのように、相手の声まで聞こえる。


どこかで聞いたことのあるような声


教祖は、困ったように笑うの。相手を見つめて。


ドクドクと血液が流れる音が聞こえる


なぜ？元々想像力は豊かだけど、こうして鮮明に見えることはなかった




『うっ、、』




胸の奥、心臓が痛い


思わず胸を押さえつけてしまう


今日はここまでにしよう


続き、気になるな


これからこの物語、どうなってしまうんだろう



本を閉じてベッドに入る


やっぱり冷たい


ベッドに、この部屋に温もりなんてものはないか


笑っちゃうな


私は重い瞼を閉じて眠りについた








A



A！





だから、なぜ、なぜ私の名を呼ぶの



誰なの？


私の名前を呼ぶのは誰なの？


光の差す方へ手を伸ばす


掴まれる感覚


…っ！誰！！！！



ねえ！誰なの！！！！！！

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