*** ページ3
「ねぇ、A。」
「なぁ、に、わたる、」
「気分は?」
「しあわせ、」
いつもそうだ。俺といれば幸せって必ず言うんだ。
この可愛い奴め、
なんて、言いたいんだけど、
思いっきり愛でてやりたいんだけど、
言えない。
だって、君の頬に涙が流れているから。
「泣くな、あほ。」
「なに、言ってるの…?わた、し、泣いてなんか、ない、よ、?」
あぁ、初めてだ。
そんな綺麗な涙を流す人を見たのは、
「絶対、離せねぇからっ、」
「んふ、いっけめぇ、ん、」
ふんわり丸まる目尻、優しくあがる口角、ほんのりピンクに染まったその頬。
全部、大好きだ。
ただただ、握る。
握ることしか出来ない。
彼女の角張った俺よりも小さな手を。
ちゃんと指を絡めて、せっかく、恋人になったんだから。
「もうすぐ、かなぁ」
「まだ。まだだ。俺が離さないから。」
「かみさまに、意地はらないでくだぁさい、」
今だって分かってる。
荒いんだ、君の息が。
か細いんだ、君の声が。
分かってんだ。
俺のをお前にやれば、お前が生きれること。
「泣かないでよ、渉」
そう呟くお前の声が、あと何ヶ月、何日、何時間聞けるんだろう。
俺が死ねばいい話なのに、そしたら、Aは生きていられるのに。
なんで、俺なんだ、
なんで、俺がコイツの手を握ってるんだ。
逆がよかった。
運命なんて信じない。
俺が生きてAが生きれない運命なんて、信じてやらない。
でも、
「わっくん、!笑って?」
君が望むのであれば。
俺は、
「おうっ…!」
運命に抗おう _
39人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:作者一同 | 作成日時:2019年10月6日 10時