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「あ、坂田じゃん!も〜!お盆にまでゲーセンなんてホントに坂田はゲームが好きだなぁ」
親父から、Aが学校の屋上から飛び降りたと聞いて、その後の記憶がない。
じゃあこれは何だ。夢か何かか。
この台詞はまだ懐かしくない、聞いたばかりの台詞だ。
八月十五日。午前の記憶。
お盆最終日にもなり何かすることがあるのかと思えば、何もなくただただ暇を持て余していた俺は近くのゲームセンターで暇を潰していたのだ。
朝からずっと銃撃戦のゲームをしていた。
そうして彼女にゲームセンターで会って、少しばかりではあるが会話をして、そうして彼女は弟に呼ばれてどこかへ行ってしまった。
それが彼女の最期の姿だった。
「これ、夢…?」
「何言ってるの?普段からそんなこと言わない坂田がそんなこと言うなんて珍しいね」
夢でないとはどこかで分かっている。
ゲームのし過ぎで少し痛めた手首が、今の状況が現実だと訴えかけてくる。
流石に夢と現実の区別ぐらいは現実に居ればハッキリと分かる。
ここでそのことを言ったとしても、あまりにも突飛で笑い飛ばされてしまうかもしれない。
「と、所でA。この後の予定は?」
「この後?うーん…このまま遊んどくかなぁ」
「学校にでも行くんとちゃうん?」
「学校?なんで?今日までお盆なのに何で学校になんか行くの!?私やだよ行きたくない!」
髪の毛を弄る癖は相変わらず抜けていない。
この後学校に行く事を決めているのだろう。
そんなことさせてたまるか。そのまま学校に行って命を落とすだなんて許さない。
「A、今日一日一緒に居ろう」
「え、ホント!?いいよ!」
案外すんなりと笑顔で了承するAに安心してしまった。
そのまま二人で何かゲームがないかとゲームセンター内をフラフラと散策する。
彼女はあまりゲームが得意ではなかった。そうなれば誰でも出来るゲームを一緒にするしかない。
「あ、坂田、ちょっと行きたい所あるんだけどいいかな?」
「どこ行くん」
「え、いや…あの…」
「なぁ、どこに行くん?」
「……言いたくはないなぁ」
「嫌や。言って。どこに行くんやって!」
「………トイレに行きたいのって言い難いじゃん…」
この時ほど、自分の早とちりを恨んだことはなかった。
トイレならトイレだと先に言ってくれれば納得したのに。恥ずかしがることなんて無いとは思うが。
彼女の赤点なんて毎度毎度見てきたのだから、それに比べたら何ら恥ずかしいことなんて無いだろう。
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作者名:作者一同 | 作成日時:2019年10月6日 10時