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私の異変に気がついたらしい折原さんが私の傍に寄ってきた。ここは私の家。私がやろうと思えば、包丁を取り出して彼を刺殺することだってできる。
そこに置いてある配線の紐を使って縛殺することも、椅子を持ち上げて頭を殴って即死させることだって出来てしまう。
「ぁ、だめ、折原さんだめ……今すぐ離れて……」
「っ、拒絶されても離さんからな！……このまま離したら、Aちゃん壊れるかもしらんやろ！」
そう言って私を抱きしめた彼は私の後頭部に手を回していっそキツいと思える程に、更に強く抱き締めた。そして1度離されたかと思うと愛おしそうな瞳に見つめられて、彼に抱いた気持ちに、今度は目を逸らしたくなくて視界に涙が滲む。
あ、すきだ。
どうしようもないくらい、彼の事がすき。依存したくなるくらい、縋り付きたくなるくらいに大好き。
……それでも、これは本能に植え付けられたようなもの。本能の前に愛だの恋だのなんてものは通用しない。
目の前の大好きな彼が、
______殺したくて堪らない。
次の瞬間、私は彼の肩を押してバランスを崩して後ろに倒れた彼の上に跨った。未だに状況が掴めず抵抗できないらしい折原さんの首に手を掛けて、思いきり力を込める。
自分ではその行為に制御が出来なくて、カーディガンがはだけて肩までずれ落ちたのも気にせずに私は彼の首をぐっと押し込んだ。
ぁ、まって、やだ、死んじゃう、折原さんが……
「っ……なんで、私なんか好きになっちゃったんですか……！」
「ぅ”……A、ちゃ、……」
「すき……好きです。私も、折原さんのこと大好きなんです……ほんとは好きにならないはずだったのに、貴方が笑う度に心臓がぎゅってなるんです……」
でも、この衝動は止められない。
本能が直接問いかけてくるような感覚がした。私の頭に彼を殺せという言葉が響き渡っては木霊して、脳裏に張り付いていく。呪いのようだと思った。
下にいる彼の綺麗な頬に、私の汚い涙が雨のように溢れてぽつぽつと落ちていった。
……あ、だめだ。もうだめだ。
彼と出会わなければよかった。
彼と一緒にいなければよかった。
彼を拒絶していればよかった。
……彼に、恋なんてしなければよかった。
「ぅあ”っ……もっ！ちゃんとせぇ、よ！」
「っ？！」
よ、のタイミングで、彼が動いた。
そして私は逆に折原さんに押し倒され、関節を押さえ付けられて完全に抵抗できない状態に抑え込まれる。
たす、かった……？
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作者名：作者一同 | 作成日時：2019年10月5日 5時
