愛して1% ページ1
「はっ、はっ、はっ、はっ」
カツカツと言うローファーと音と、短く小刻みな呼吸音が誰もいない廊下に響く。
一人の小柄な少女が呼吸を乱して走っていた。
会いたくない、誰にも。
誰にも、逢いたくない。
栗色の髪に一筋だけ通っているその銀色の髪が光を帯びて光った。
少女の顔は涙でぐしゃぐしゃ。
余った袖で涙を拭くも、次から次へ溢れてくる。
それを止めるために必死で、気付かなかった。
未来を変える人物に＿＿＿＿
「わっ⁉」「ッ…」
ほぼ同時に息を漏らす。
少女はばたりと後ろに倒れて腕から落ちた教科書を呆然と見つめていた。
「だっ、大丈夫？」
少女とぶつかった人物。黒い髪に緑の瞳の少年は彼女に手を差し伸べた。
そんな手を無視して、少女は逃げようと立ち上がる。
「あっ、まって！」
少年は思わず彼女の手首を掴むと、しまった、という表情に変わり、目線を泳がせる。
顔を若干赤らめ、少女の目を見ようともしない。
少女は片目を袖で擦りながら、嫌そうな表情を浮かべると力任せに振り払った。
勿論少年は驚くが、その手首をもう一度掴もうとはしない。
だって、驚くほど細かったものだから。
彼女が何処かへと走り去っていく。
こちらなど見向きもせずに。ただそれを見つめて突っ立っているとある物に気付く。
青と銀で飾られた、高そうな手帳。
あの子のだ。
そう気付くのは早く、1ページ目に筆記体で書かれている文字を追い、少年はポツリと呟く。
「ニファ…？」
ぽんぽんと疑問が辺りに飛ぶ。
しばらくその手帳を見つめては、中身を開くか、開かないかで少年はうじうじと悩む。
そして、いきなりそんな少年の背後から日本の手が伸びてきた。
「やぁ、ハリー！調子はどう？」
「少し顔が赤くないか？」
「おっとそれは手帳じゃないか」
「しかもあの姫君の」
テンポよく繰り返される会話に、ハリー、もとい少年が振り向く。
そこにはよく似た赤毛の双子がニヤニヤしながら立っていた。
「ひめぎみ？君達がそう呼んでるの？」
「いんや、学校中から言われてる」
「蛇寮のメデューサ姫ってな」
「メデューサ…、」
手帳を固く握り締めた。
「あぁ、その目見たやつはみーんな怯えて腰抜かすんだってよ」
ハリーはメデューサと言う意味がよくわらかなかった。
だって、あんなに優しくて、綺麗な目をしていたのに＿＿＿
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作者名：ノア | 作成日時：2017年8月26日 17時
