小さな過去編 ページ5
「どうしたの？」
すすり泣く声に似合わない、明るい声が響いた。それは少女ならではの高い声で耳に響く。
「…泣いてるの？」
「…やめて…みなっ、いで…」
少女は泣いている少年に歩み寄り、隣に座った。少年はそれを拒むように顔を隠した。
ローブの色は緑色。自分と違う、相性の悪い色が目に入って、少女は自分のローブを見た。
赤い獅子のシンボルで飾られているこのローブ。この様子だと、自分と同じ寮の人たちにやられたのだろう。
自分よりも背が小さい少年を、少女は弟を見るような優しい目で見ると、泣いている原因であるローブを遠くに脱ぎ捨て、ネクタイもしゅるりとはずした。
「だいじょーぶ。泣かないで？」
隣から正面へ、掌で優しく頭を撫でてやる。
少し拒まれたが、少年は段々と安心していき、そしてなんとも言えない恥ずかしさに襲われた。
「なんで…？僕、スリザリン」
「私、寮とか正直興味ない」
スッパリと言い切った少女に少年は目を見開く。少女は一回にっこり笑うと言葉を続けた。
「寮とかなんて関係ない。スリザリンだって悪いことなんてない。それが貴方の実力で、貴方の性格だから、誰も文句は言えない。寮であーだこーだ言ってる奴が一番子供っぽいし、貴方はきにすることなんてない。私は貴方が好きだよ。初めてあったけど、合同授業で偶に見てた。綺麗な顔だなって」
少年は気恥ずかしくなって目線を下げる。
「ねぇ、友達になろ。絶対貴方を一人にしない。だから私のことも”独り”にしないで。約束しよう。私と貴方で」
差し出された小指に少年は首を傾げた。
自分も同じように小指を立てて見るが、ここから何をするかわからない。
「ぁあ、あのね、こうやるんだよ」
そう言うと自分の小指を少年の小指に絡め、そして何かを歌い出す。
知らない言葉。どこで知ったんだろうかその言葉は自分達には馴染みのない言葉だった。
「約束。私はA・ポッター！気軽にリーチェって呼んで欲しいな」
花が弾けるみたいに笑った後、彼女はまた少年の頭をかき回すように撫でた。
「ぼっ、僕はアルベール・アルベール・レグイン…」
「アルベール…じゃあ、アルって呼んでいいかな？」
そんな呼び方されたことなんてない。
けど、不思議と嫌ではなかったし、なんだかとても嬉しい気持ちになった。
「じゃあ、アル！これから私達、友達だからね！」
続く
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作者名：ノア | 作成日時：2017年8月17日 11時
