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プロローグ ページ2

「おいちょっと待てよ嘘だろ。なんだよ、何なんだよ本当にっ!!」
「さあ、何やろうな。僕にも分らんわ。とりあえず……運がなかったんやなあ、と思うとき」

 昼。しかし、裏路地であるここは人通りも陽の入りも悪く、ひんやりと冷たい空気が漂っている。
 そんな場所で、尻もちをついた男は、震え、涙目だ。そんな彼の尾を、臙脂の制服姿の騎士は表情一つ変えずぎりぎりと踏みつけていた。細められた目に、黒のマフラーに隠された口元。騎士の表情をうかがうことはできない。
 足の先以外はピクリとも動かない騎士に対し、苦々し気に男は言う。

「ああ、本当に俺は運が悪い。まさか、ガキたちのメシをやっと手に入れたところで『ユートピア』に見つかるなんざ、よお……なあ、お前も人の子だろ? もうガキ共には俺しかいねえんだ。どうか見逃しッ」

 しかし終わる前に腹部へ足をねじ込まれ、男は言葉を失った。どうにか口を開こうにも、唇の隙間から漏れてくるのは、苦しげな吐息と、端から泡のようにでる唾液だけ。

「あんた、なんか勘違いしとらん?」

 一度腹部から足が離され、安心したのもつかの間。今度は玉蹴りでもするような勢いで足が叩き込まれる。男の視界は涙でゆがんだ。

「――神は人間を作った。しかし、弱く愚かな彼らは争いあい、この地球ごと同族をほろぼそうとした。その後、神は失敗を踏まえ、三種の人間を作った。一つは原型(プロト)。それは弱く愚かな者。一つは話す者(トーカー)。それは強く賢き者。そしてもう一つは――」

 何かを反芻するよう、同時に偉大な何かへ祈るよう、騎士は言う。ぼんやりと、宙を見つめながら。
 逃げるチャンスだったりするか?
 男がそう思ったのもつかの間。騎士は言葉を切ったのち、先ほどよりも強い力で男を蹴飛ばす。男は、痛みと空を浮く感覚ののち、石畳の上へ強く打ち付けられた。先日の雨でできた水たまりに顔を突っ込んでしまって、息もできなくなるほどむせる。

獣人(ベアマン)。正しくは『畜生』やな。強い、しかし愚かな者。力を持つ愚か者っちゅーんはな、平和を求めるうえで最も困る存在なんや。神様の大失敗やな。で、それをふまえて……」

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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月23日 23時

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