不器用人生２ 【赤】

85（あなたside） ページ35

・

あんな心かき乱される事があったのに

次の日の朝、朝ごはんを食べてるすばるくんは

いつも通りに戻ってた。


いや、朝ごはんの時だけじゃない。


その後あった練習の時もﾗｲﾌﾞの時もいつも通り。

まるであの夜の出来事が嘘だったような、

私が夢でもみたのかと思うほど

何もなかったことになってた。



それでも目が合えばドキドキするし、

笑いかけられると胸がきゅうって苦しくなる。


私の気持ちはまた、別れた後の振出しに戻ってしまった。



季節が秋から冬に変わっていく。



ある日の一人練習の帰り、

なんで今日に限って自転車で来ちゃったんだ…

って悔やむくらい外が寒くて、

ﾏｽﾀｰに赤ﾁｪｯｸのひざ掛けを借りて帰っていいか聞きに

持ったまま店に降りた。


『ﾏｽﾀｰこれ、今日借りて帰ってもいいですか？？』


ﾏｽﾀｰ「えっ？？それAちゃんのじゃなかったの？？」


『違いますっ…あれ？じゃあすばるくんのですかね？？』


ﾏｽﾀｰ「それにしては随分可愛いねぇ(笑)

まぁ大丈夫でしょ！持って帰っていいよ！」



いいのかな…なんて思いつつ、

ありがとうございますっって挨拶をして

腰に巻いて自転車に乗って帰った。


家に着いてひざ掛けをたたみながら廊下を歩くと

しんちゃんが丁度居間から出て来た。


村「おぉおかえりっ！！飯食うやろ？

手洗いうがいしてきっ」


『うん♪』


荷物を置いてから洗面所にいって

手をあらったりしてると

鏡にしんちゃんが映って振り返る。


『どうしたの？？』


村「A、今日すばるに会ってたん？」


『え？？？いや…会ってないけど…』


村「ふ〜ん…」


『....なんで？？』


村「ん〜なんかこないだすばるが

あのひざ掛けと同じの買うてたん見たから」


”灰皿買うふりしててんけど、

店の外に居る俺からﾊﾞｯﾁﾘ見えてておもろかってん”

なんて付け加えるしんちゃんの言葉を聞いて

本当にすばるくんのだったんだ…

勝手に持ってきて悪かったな…

って思ってたら


村「横が寒がりの彼女に湯たんぽ買ってんのみて

真似して買うてたみたいやけどな(笑)」


なんて言うから、

私の為に？なんて自意識な感情が

芽生えてくる。


そんな私の表情をみて


村「...やっぱり、すばるから貰ったものやった？」ﾆﾔ


って言いながら笑うしんちゃんに


首だけ傾けて答えて

どうしても期待しちゃう気持ちを落ち着かせた。


・

86→←84

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す