ツンしゅん彼女。1 ページ2
「行ってきます。」
誰も居ない静まり返った家。
“行ってきます”と言葉を発しても“行ってらっしゃい”は帰ってこない。
共働きなのだ。仕方がない。
でも寂しいものは寂しい。
「...はぁ。」
小さな溜息を漏らしつつ、扉を閉め鍵を回す。
再びドアに手を掛け、きちんと鍵が閉まっているか確認。閉まっている。
冬の早朝はとても寒い。口から出る息は白く、指がかじかんでヒリヒリと痛む。
時刻は6時40分。通常の生徒の登校時刻は8時だが、予餞会...まあ所謂卒業を祝福するためのイベントが迫っているので、生徒会の一員である私は準備に参加しなければならない。
当然、遅刻するとこっぴどく生徒会長であるそらるさんに叱られる。
.........というのに。
目の前ですやすやと眠る幼馴染は一向に目を覚ます気配がない。
「......坂田。起きて。」
布団を引っぺがす。
「うぅ...っさむ。......A？」
「...おはよ、置いてっていい？」
「え？...今何分？42...6時！？
今日なんかあったっけ？」
「予餞会の準備。」
「あああああっ！！忘れてた！ごめんA部屋出て待っとって！」
着替えたりするつもりなのだろう。寝癖をぴょこぴょこと揺らしながら私を部屋の外に促す。
まあこいつが寝坊するのはいつもの事なので、リビングで里香さん(坂田のお母さん)と駄弁りながら待つ。
「ごめんねぇ...毎日毎日。Aちゃんも忙しいのに...あの子ったら。」
「もう慣れちゃったんで大丈夫です。それに、私も早起き出来るから時間に余裕を持てるので。」
「もし寝坊しちゃったりしたら家来ていいから！朝ご飯用意して待ってるからね。」
「ふふ、その時はお世話になります。」
里香さんは息子の坂田同様とてもコミュ力というものが高い。住宅街を歩いていて里香さんを見かけると、いつも私が知らない近所の人と喋ってる。
ココアを頂きながら待っていると、ドタバタと足音を大きく鳴らして坂田が階段を駆け下りてくる。
今日も変わらず寝癖を直す気がないらしい。
「あ！今日も待っとってくれた！」
「...もう少しで置いて行く所だったけど。」
「そう言ってる割にいつも待っとるやん。ツンデレやなぁ...。」
「ツンでも無いしデレでも無い。というかあんたの前でデレたことないと思うけど。」
ご馳走様でした、と里香さんにカップを返す。
まだ少しかかりそうなので、先に外へ出て待っていることにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 888人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まキュー - もうヤバイ。もう一回読みに来たらまた尊いしか叫べなくなった。そして、私は今も待ち続けるﾖｯ (2021年8月24日 20時) (
レス) id: 3f6815ec2f (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - いまだに待ち続けている忠犬ですどうも (2021年7月31日 23時) (レス) id: e7f1d7c7f6 (このIDを非表示/違反報告)
チョコミント - なんか、感動とドキドキとときめきで涙出た……>< (2021年1月5日 18時) (レス) id: 74038fe2ca (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - 一気読みしました、はい← 更新停止中ですね…(´･ω･`)更新してほしいな〜なんて…(おこがましい←)でも、待ってますね！！！ (2020年6月4日 18時) (レス) id: 9cafc3556e (このIDを非表示/違反報告)
みねねん - すごくおもしろくて好きなので、最新するの待ってます！ (2020年1月3日 10時) (レス) id: 5e62c9508d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：shino | 作成日時：2018年12月22日 12時
