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またねって言うよ。【伊弉冉一二三】 ページ43

「以上を持ちまして、卒業証書授与式を閉じます。」
長かった卒業式も、教頭の言葉で終わりを迎えた。
___

高校生としての3年間なんて、あっという間だった。
毎日が楽しくて、気が付いたら今日になっていて。
隣の席で笑う彼女とも、もう会えないだなんて。
正直、実感が湧かない。
いつまでも、この時間が続けばいいのに。
でも、そんなこと無理だって、心のどこかではわかっていて。
認めたくないから、目を背けていた。取り繕っていた。
...いつだってそうだ。
都合のいいことばかり見て、全く成長していない。
だからこの気持ちも、伝えられないままなんだ。
いつも通りの日常が、もう終わる。
躊躇ってしまえば、きっともう二度と届かない。
何でもっと早く伝えられなかったんだろう。
今日伝えることが出来る保証もないけれど。
隣で無邪気に笑う彼女を見て、はぁ、と溜息を零す。
いっそ、嫌いになってしまえたなら。
何度もそう思ったけど、結局無理だった。
胸が痛くなるほど、好きで。
どうしようもないほど、恋焦がれていて。
胸の痛みで涙が零れそうになるのを必死に堪えて、窓の外を見つめる。
早咲きの桜がもう散り始めていて、花吹雪が舞っていた。
あんな風に、この気持ちごと花びらと一緒に散ってしまえばいいのに。
あぁ駄目だ、なんて思った時にはもう、涙が溢れていて。
『一二三くんもやっぱり寂しい?』
泣いていることに気が付いたらしい彼女が、話しかけてくる。
卒業することが寂しいと思ったらしく、
『大丈夫。離れても、心は繋がってるよ!』
なんて、見当違いの励ましをしてくる。
「ありがとう。もう大丈夫。」
いっそAも、優しくなんてしないで、冷たく接してくれたら良かったのに。
ほら。また、もしもなんて考えてる。
今更どうしようもないのに、ね。
『そう?なら良かった。』
ふわりと微笑む彼女を見て、胸が苦しくなる。
この気持ちは、きっと君には届かない。
___いいや、伝えることが出来ない。
ヘタレな自分が、嫌になる。
俯いていたら、
『大丈夫。私は一二三くんの味方だよ。』
優しい声で、そう言ってくれた。
どうか、優しくしないでほしい。
お願いだ。出来ることならば、君から嫌って。
君を嫌いになるなんて、出来そうにないから。
『じゃあね、一二三くん。3年間本当にありがとう。』
手を振る彼女。
___何て返そう。
「じゃあね」や「さよなら」も考えたけど、また出会いたいから。
精一杯の笑顔で、「またね」って言うよ。

君の記憶に焼き付けて。【観音坂独歩】→←同じ景色を。【神宮寺寂雷】


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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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