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溢れ出すのは。【夢野幻太郎】 ページ40

挨拶をして、言葉を交わして、それだけで十分だったのに。
貴女が優しくするから、もしかして、なんて期待をしてしまう。
___愛されたい、だなんて。
自分らしくもない。
どうせ、今日限りで彼女ともお別れだ。
この気持ちには蓋をして、あと少しだけ、嘘を吐こう。
「はぁ...。」
溜息を吐くと、
『幻太郎?』
聞き慣れたAの声がした。
「おやおや、Aじゃないですか。」
『うん、そうだよ?』
驚いたふりをすると、真顔で返ってきた。
これはなかなか、気まずいものがある。
「すみません、ふざけました。」
素直に謝ると、
『全然いいよ。それで、どうしたの?溜息なんか吐いて。』
心配したような表情でそう言う彼女。
...いつもそうだ。
必要以上に優しくなんてしないでほしい。
優しくされても、辛くなるだけだ。
「貴女が、優しくなんてするから、」
彼女に聞こえないように、そっと呟く。
『...?何か言った?』
「いいえ。何でもありませんよ。」
泣き出してしまいそうになるのを堪えて、取り繕った笑顔で返す。
『辛いことがあったら相談してね?』
なんて、無邪気に笑うA。
今、こんなに辛いのも、泣きそうになるのも、全部貴女のせいなのに。
いっそ、この気持ちを忘れることが出来たなら。
一度自覚してしまったこの気持ちを、なかったことに出来るなら。
そうしたら、こんなに辛い思いをすることもなかったんじゃないかって。
でも、彼女を好きな気持ちは一向に消えないし、変わらない。
それほど強く恋焦がれている。
今日も。きっと、これからも。
「...ねぇ、もしも。」
『何?』
___しまった。声に出ていた。
まぁ、いい。
もう会えなくなるのなら、伝えてしまっても構わないか。
「Aのことが好きだと言ったら、どうしますか?」
『私は...。』
少し考え込む彼女。
ようやく顔を上げたと思ったら、
『私も好きだよ、って言うかな。』
花が綻んだような笑顔でそう言う彼女。
えへへ、と照れたように微笑む彼女が愛しくて。
「好きです、大好きです...っ、」
今までずっと蓋をしていた気持ちと、堪えていた涙が零れる。
「Aのことが、どうしようもないくらい好きなんです。」
懺悔のように呟くと、
『私も、ずっと幻太郎が好きだった。』
そう言う彼女の目からも、大粒の雫が流れていて。
『これからも、宜しくね。』
差し出された手をそっと握る。
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
溢れ出すのは、彼女への恋心と涙。
...そして、心からの笑顔。

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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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