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「廃棄、ということで合ってますか?」
「申し訳ありませんが、博士も例外では無いのでそうなります」
「………そうですか、分かりました。返事は後ほどでも?」
「承知しました。ご協力感謝します。良いお返事お待ちしております」
”例外は無い”
政府の人間が帰った後、この言葉に男は悩んでいた。
「廃棄……?…捨てられるの…?」
だが、この会話を機械人形が聞いていたことを男は知らなかった。
それから少し経ったある日の事だった。
以前から新しい家族として作っていた最新型の機械人形がついに完成した。
もちろん男が作った今までの機械人形も高い性能を誇っていたが、それのさらに上を行く最高傑作であった。
男は逸る気持ちを抑え、完成を告げる為に家族の元へと向かおうとした。
するとそこへなぜか暗い表情をした機械人形が男の前へと現れる。
「ちょうど良かった、お前にも見せようと思っていたんだ。ついに完成したんだ!最新型の機械人形が!」
しかし、機械人形はチラリとその姿を見ただけで俯いたままだった。
「どうしたんだ?何かあったのかい?」
機械人形は男の声など聞こえていなかった。
旧機種の廃棄の話を聞いてしまった上、大好きな男が最新型の機械人形を愛おしそうに見つめていたからだ。
「…ねえ…っ…廃棄って何…っ?」
聞かれたのか。男はそう思った。
「どういうこと…?俺廃棄されんの…?」
震える声を振り絞り、その機械人形は大好きな機械技術者を見つめる。
男は何も言わない。いや、言えなかった。
「俺は、俺は…っ!あんたのことが大好きなのに!!!お前は私の希望だって言ったじゃん!!!!」
男は驚いていた。
そんな昔に言った言葉を目の前の機械人形が覚えていたことに対してもだが、搭載したはずのない悲しみという感情から溢れる涙が機械人形の目からこぼれ落ちているからだ。
「お前泣いているのか…!?その涙はどうやったんだ?私に見せてみなさい!」
男に言われて初めて自分が人間のように涙を流していることに機械人形は気づいた。
いつもなら素直に男に身体を預けていただろう。
しかし、機械人形は目の前の大好きだった優しい男を信じることが出来なかった。
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作者名:あさい。 | 作成日時:2023年2月22日 2時