▽フロストバイト ページ24
ぽつぽつとまばらだった雨も、しばらくすれば雨足が強くなった。
あの常連さんを最後にお客さんも来なくなった事だし、閉店時間までもう10分も無い。今日は閉めてしまおう、とグラスを拭く手を止めた。
確か、初めて中也さんに会った日もこんな雨だったか、なんて考えながら扉に向かえばちりん、と透き通った鈴の音が響く。
「やぁ、相変わらず素敵なお店だね。
久しぶり、A」
扉を開けたのは一人の長身の男。
懐かしむようにぐるりと店内を見渡している。
「もう閉店なんだけれど────太宰くん」
太宰治。久しい名前に思わず笑みを零す。
「酷いねぇ、数年ぶりに再開する友人への第一声がそれとは。もう少し歓迎しておくれよ。
よく君の店で呑むような仲だっただろう?」
「わざわざ気を使わなくても良い仲でもあるでしょ」
にっこり微笑む彼に負けじと微笑み返す。
太宰くんとはこんな言い合いが出来るような昔からの友人だ。
「ある日急に来なくなるからてっきり念願の自 殺でも果たしたのかと思った」
「あいにく今の私は心中の相手募集中でね。一人で死ぬつもりなんて無いのだよ。
そうだ、せっかくだからAもどうだい?」
「せっかくの意味がわからないけどお断りしておくよ」
つかつかと歩み寄る太宰くんを一蹴すればそれは残念だと彼は笑いカウンター席に座った。
「だから、もう閉店時間なんだけど?
いくら友達でもそこはサービスできないよ」
「あぁ、わかっているとも。
そんなAを夜の街へ誘いにやってきたのさ。どうだい、一緒に?」
「あいにく私はそんな軽い女じゃないの。
口説くつもりならよそでどうぞ」
「お堅いAだ、そう言うと思ったよ。
でも、その寂しげな顔が隠しきれていないのはまだまだだなぁ」
反射的に顔を逸らした。頻繁に顔を合わせる常連さんはともかく、まさか久しぶりに会った太宰くんに言われるとは。
「私ならその心の隙間を埋められる。
どうだい?今度は夜のお誘いだ」
妖艶に笑う太宰くんに私は答えない。
中也さんへの想いが募る一方、諦めて忘れようとしてる私がいるのも確かだった。
「一度でいいから委ねてみればいい。その後を決めるのは君だ」
勝ったのは忘れさせて欲しい気持ちだった。
これ以上、辛い思いはしたくないから。
『Yes』の代わりに、差し出された太宰くんの手を取った。
*♡*
フロストバイトの意味は『甘い誘惑』
*♡*
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキーナンバー
8
ラッキーアルファベット
X
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
ラッキー文豪
広津柳浪
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gross - かっ、かっこよ…!そして、太宰、ようやってくれたなぁ!(笑)お疲れさまでした (7月21日 16時) (レス) @page35 id: 5ce60c8f4c (このIDを非表示/違反報告)
ヒメ* - ヒイイイイイイ中也イケメン(hshs) (2017年7月15日 18時) (レス) id: ab38d97291 (このIDを非表示/違反報告)
月宮真(プロフ) - 無事に、完結おめでとうございます〜♪ 新作を、書くつもりであれば是非読みたいです! お疲れ様でした♪ (2017年4月18日 2時) (レス) id: 06046fe2b1 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 遅くなりました(土下座)完結おめでとうございます!また会いたいです!! (2017年4月17日 21時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
夜姫(プロフ) - とても良い話でした!有り難う御座いますm(_ _)mお疲れ様でした! (2017年4月16日 12時) (レス) id: c51dc61a83 (このIDを非表示/違反報告)
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