prologue ページ1
.
「そこにいんの誰?」
「………にゃぁ、」
「なんや猫か」
その声にほっとして、胸を撫で下ろすと、先程より近い距離で同じ声が聞こえた。
「迷っちゃった?」
その声に顔を上げると、髪色が派手で、キラキラした服を着ている男の人がいた。ここは路地裏で、目の前の彼が言っているように私は迷子である。けれど、それは私があの場所から遠くに離れたかったからで、あの場所に帰るつもりもないし、ここに来るまでの交通費でほとんどお金は残ってないから元いた場所に帰りなと言われても無理な話である。私と同じ目線で会話するためにしゃがんでくれているこの目の前の男の人の言葉にふるふると首を振って私は彼から顔を背けた。
「おい、不破どこだー?」
ビクッと急に彼が来た方から大きな声が聞こえて肩が震えた。彼の方を見ると、彼は着ていた上着を脱いでいた。思わず目をぱちくりさせていた所彼は脱いだ上着を私に掛けた。
「ぇ、」
「ここでその格好は目立つからね。」
ふわっと彼の上着がかかると甘い匂いが広がる。目立つ格好、そうだ。私はあのままの姿で出てきたのだ。高校の制服のまま。やはりここに来るまでに感じた視線は、私が未成年であるのに、こういう場所を歩いていたからだろう。まぁ、その視線のせいでここに逃げてきた訳だが。こんな都会行ったことなかったし、方向音痴だからいつの間にか着いてた所がここな訳でわざとでは無い。話には数回しか聞いたことなんてないし、来ることなんてないと思っていたのに、来てしまった。
「あの、…上着、」
「そこで待ってて。すぐ戻るから。」
この上着どうしたら、そう言おうとしたら彼が私を止めて動かないように言う。とりあえず頷くと彼は来た方に歩いていった。ギュッと彼から預かった上着に力を入れる。怒られるのかな、それとも放置されるのかな、でも上着あるしな、なんて考えながら彼を待っていたら彼が走って戻ってきた。
「ごめんなぁ、ちょっと遅くなったわ。」
そう言って彼は帰ってきた。改めて見るととても顔が整っていた。服装や髪型、雰囲気などを含めて、恐らく十中八九彼は、ここらの店の関係者なんだろう。彼は座っている私に対して手を差し出すとふわりと笑う。私はその手を取って立ち上がった後上着を脱ごうとすると止められた。
「とりあえずここから離れるで。」
373人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼井(プロフ) - 狛希さん» 狛希さんコメントありがとうございます。読んでいただいて、その上嬉しいコメントを下さって本当に嬉しいです。ありがとうございます!! (2月6日 17時) (レス) id: 5ecf86ccc0 (このIDを非表示/違反報告)
狛希 - 初コメ失礼します。更新されたところまで読ませていただきました!夢主さんとの心の距離がどんどん離れていくような描写がすごく心に残りました。この作品が好きです! (2月6日 16時) (レス) @page23 id: 81e78c7a48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蒼井 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/5291025/
作成日時:2024年1月15日 18時