近う寄れ ページ2
「グスタフ」
そう、俺を呼ぶ声が聞こえた。
いつも隣にいる緑のヤツ。
「なんだ、忠臣」
桜華忠臣。その素性は明かされない、謎の人間。
いや、人間というべきなのだろうか。
まぁ、それはきっと俺もだが。
「今日は随分と味方に煽られていたな」
「……」
『タンク』『だめ』
こんなの、言われ慣れている。
ドアを持ってないだけで、アタッカーに負けただけで、Ｃポータル守れなかっただけで。
価値観が無いかのようにボロクソ言われる。
「貴様は我が認める程の力がある。そう落ち込むでない」
「…俺は落ち込んでなどいない」
言い返すと、忠臣は嬉しそうにニンマリと笑う。
「ほぉ…、我に逆らうというのか」
いつもの上から目線で俺を見上げる忠臣の瞳に、心配の色が見える。
なんだかんだ言って仲間を大切にしたりする忠臣の性格に、俺は、一体いつから惹かれていったのだろうか。
「この我が慰めてやっているにもかかわらず、貴様は我に歯向かうというのだな」
「そういう訳では」
「良かろう」
軽く笑う忠臣が、俺に向かってつかつかと歩み寄ってきた。
そして、軽く背伸びをし、俺の頭を撫で撫でする。
「な、なんだ忠臣」
「本当は我にこうして欲しかったのだろう？今だけなら、甘えを許してやろう」
俺を見上げる瞳に、悪戯心が見える。
薄く笑った忠臣が、若干動揺している俺にさらなる爆弾発言を投げかけてきた。
「グスタフが良いなら…、この先を続けてやってもよい」
「！？」
俺は目を見開いた。思考が一気に停止する。
この先って、この先って…っ！
「ど、どういうことだ、忠臣」
「ふふん」
忠臣は嬉しそうなドヤ顔をした後、俺から離れていく。
手をビシッとこちらに向けて、一言、こう言った。
「抱いてやる。近う寄れ」
続く
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作者名：煉 | 作成日時：2018年1月15日 18時
